そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

現代社会・時事

民主主義の定義

そもそも、「民主主義」って何でしょう? 定義すると「政治的な意思決定に対し、それに従う人々(国民・民衆)が参加できること」ではないでしょうか。これは「民主制(政)」ともいいます。 意思決定に従う人びとが、その決定に直接参加できるなら「直接民…

欧州の新しい「壁」・人類は壁をつくってきたが、それは破られてきた

ウクライナのゼレンスキー大統領は、先日(3月17日)ドイツの連邦議会におけるリモート演説で「欧州の新しい壁を壊してください」と訴えたそうです。つまり「自由」と「非自由」を分かつ壁が、今の欧州にできているのだと。(日経新聞2022年3月18日など) …

体系だった世界観・なぜカルトにひきつけられる?

昨日(3月20日)は1995年に地下鉄サリン事件が起こった日で、新聞・テレビなどで、当時をふりかえる報道がありました。オウム真理教というカルト教団が、都内の地下鉄に猛毒のサリンをまいたテロ事件。あれから27年も経つのですね。 当時の私(読書が生きが…

「災害の時代」の暮らし方

これからの日本は、水害や地震などのリスクが高い「災害の時代」になっていくのかもしれません。政府は防災のための投資を増やす必要がありますが、そんな財政の余力があるかどうかは疑問です。 だとしたら、自分でできることは何か。ある専門家は「とにかく…

「ジョブ型・メンバーシップ型」で日本の雇用システムを読み解く

少し前に濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書、2021年)を読みました。 この本によれば、雇用システムの2つのあり方として「細分化した業務(ジョブ)に専門の労働者を割り当てる」(ジョブ型)と「多くの職務を遂行する労働者で組織が成り立…

「国際社会」は存在するのか?

常々思うのですが「国際社会」という言葉には、どうも違和感があります。その言葉を使う人が一般に志向する、平和や人権を大切にする価値観じたいは、私も共感します。 それでも「“国際社会”といえるものが、この世界に実際に存在するのか?」と疑わしく思う…

近代化とは模倣である・その難しさ

エリック・ホッファー(1902~1983)という思想家は、“近代化とは基本的に模倣”だと述べています。それは“後進国が先進国を模倣”する過程であると。 そしてこうも述べています。 “自分よりも優れた模範(モデル)を模倣しなければならないときに苦痛を感じさ…

仕事の手を止めない人たち

東日本大震災(2011年)のあった3月11日には、亡くなった方たちを悼む人の姿がみられます。少し立ちどまって、日常の手を止めて、それは行われます。意義のある、大事なことです。 一方で大災害に直面したときでも「とにかく、ふだんの仕事の手を止めない」…

プーチンは「ヒトラーとナポレオンの過ち」をくり返すか

ロシアによるウクライナ侵攻について、海外のある識者が「プーチンはヒトラーとナポレオンの過ちをくり返している」と述べているのを、ネットニュースでみかけました。 「過ち」とは、野蛮な侵略戦争そのものを言っているのではありません。かつて2人の強大…

そもそもヨーロッパとは・ヨーロッパの「西と東」とは・東方正教とは

このところ私たちは、ロシアを含むヨーロッパの地図をテレビやネットでくり返しみています。 そもそもヨーロッパとは何か? 地理学者のジョーダン夫妻(『ヨーロッパ』二宮書店)によれば、つぎの3条件をみたす地域のことです。 ①住民の多数派がキリスト教…

国家は「幻想」ではなく、現実的な「利害の共同体」

「国家というものは、ある種の幻想だ」という説あります。私は、これはちがうと思います。私は「国家にはそれなりの現実的な成立根拠がある」という立場です。 今の世界の国ぐには「国民国家」です。「国家」というと、多くの場合、国民国家をさします。これ…

第一次世界大戦が始まった経緯・東欧の地域紛争が世界大戦に

第一次世界大戦(1914~1918)は、西欧とロシアの狭間(はざま)である東欧の地域での、大国が中小の国家を攻撃する地域紛争をきっかけに始まりました。今のウクライナ情勢をみているとそのことを連想し、恐ろしくなります。 第一次世界大戦勃発の経緯は、以…

ロシアの基本データ・日本人にはわかりにくい国

ロシアという国の基本データをみると、たしかに日本とはいろいろな面で大きくちがっています。手元にある統計集『世界国勢図会』(矢野恒太記念会)でみてみると… まず人口。ロシア1.5憶、日本1.3憶(2020年)。人口は近いですが、ロシアの面積は日本の45倍…

感染症は文明の副作用

感染症は、文明に必然的に伴う副作用です。多くの人間が密集する「都市化」や、遠く離れた地域と交流する「グローバル化」という文明の要素が、激しい感染症の被害という副作用をもたらしてきました。 5000年ほど前のメソポタミアでは、すでに数万人規模の都…

介護職の制服は良くなってほしい

ある日テレビで、介護職の人たちがコロナ禍で頑張る映像をみていて「介護職の制服は、もっと良くなってほしい」と思いました。 そのとき映っていた人たちの制服は、ペラペラな感じのピンク色のポロシャツ。重要なエッセンシャルワーカーの制服が、これでいい…

エリザベス2世は「人類史上最初の1人」

英国の女王エリザベス2世(1926~)が(2022年2月6日で)在位70年を迎えたそうです。 そういえば、昨年(2021年)に観たNHKのテレビ番組で、エリザベス女王の幼少期や若い頃の映像(動画)を紹介して「赤ちゃんのときの映像が残る最初の国王」だと述べて…

北京オリンピックの開会式

北京オリンピック(冬季大会)の開会式をみました。好き嫌いはともかく、シンプルで「何をしたいのか」が明確な演出だと思いました。演出を手がけたクリエイターが、力量を発揮できたのでしょう。 私は中国の独裁体制に反感を持っていますが、この開会式は「…

「感染は自業自得」という意識

2020年3月~4月の調査で「感染症にかかることは自業自得か」という質問に対し、「そう思う」「やや思う」「どちらかといえば思う」という人の割合が、日本は他国よりもとくに高かったそうです。 「感染は自業自得」と答えた人は、日本では11.5%。一方、アメ…

日本の若者が希望を抱きにくい原因は「社会の硬直性」か

内閣府が2013年に行った「若者の意識」についての国際的な調査があります。日本および6か国の若者(13歳~29歳)を対象としたもの。 その質問項目に「自分の将来に明るい希望を持っているか?」というのがあります。選択肢は「希望がある」「どちらかといえ…

新国立競技場と大人しくなった日本

東京オリンピックのメインスタジアムの新国立競技場(設計・隈研吾)は、巨大だけど周囲にも調和する、たしかに立派な建築です。 しかし一方でその前に立っても、あれだけ大きいのに「ものすごい」という感じで迫ってはこないように、私には思えます。 これ…

コインも紙幣も最初は「仮想通貨」だった

近年普及してきた仮想通貨(暗号資産)というもの。ネット上の技術や契約・ルールに基づく、デジタルなお金です。これに対し、紙幣やコインという「本来のお金」があります。 でもお金の歴史をみると、これらの本来のお金も、最初はみな仮想通貨的なものでし…

日本は「賞をあげる国」になることを考えよう

日本の芸術・学問などのクリエイティブな業績が、海外で大きな賞をとったと聞くと、うれしいものです。 でも、ふと思うのです。日本にはアカデミー賞やカンヌ映画祭、そしてノーベル賞に匹敵する、誰もが知るような世界的イベントはないのだなあ、と。 オリ…

三権分立の本当の意味・「権力均衡のしくみ」ではない

国家でも企業でも個人でも「何かを行う」のは、大きく分けてつぎの3つの段階から成っています。 1.何をするか決める(Plan=計画・企画)2.実行する(Do=実行)3.行った結果を当初の決定に照らし確認する(See=検証) そして、憲法で定める三権分立とは、…

創造論を信じる人たち・科学を受け入れるのは容易ではない

2017年のギャラップ社による調査では、アメリカでは「神が人類を創造した」という創造論を信じる人は38%だったそうです。 そして「進化は神の導き」とする人も38%。「神の導きなしに人類は進化した」という進化論者は20%に過ぎません(三井誠『ルポ 人は…

コミュ力重視の社会

今度の宇宙飛行士の選考は、理系の学歴・職歴を持たない人にもオープンになりました。発信力、つまりコミュニケーション能力(コミュ力)を一層重視するのだそうです。 最近の採用選考では、一般企業はもちろん、公務員でも技術者でも研究者でもクリエイター…

「かつてない転換期」と言い続けるリーダーたち

今年の正月の日経新聞に載った、有名な総合商社の全面広告でこんなメッセージが述べられていました。 「いま、世界はかつてない転換期」「これまでの常識が通じない」 そういえば、私が若手社員だった30年余り前にも、新年に私の会社の社長はそんなことを述…

新旧2つの世界・インターネット以前と以後

今から30年余り前、私そういちが若者だった1990年頃、活字文化はまだそれなりに元気でした。当時の私は読書好きの1人として、社会・人文系の古典を読むことに大きな意義を感じていました。古書店にも足を運びました。 インターネットはなく、パソコンも普及…

今日の名言 未来はすでにここにある(ギブスン)

【今日の名言】 ウイリアム・ギブスン(SF作家、1948~) 未来はすでにここにある。ただ、いきわたっていないだけだ。 未来は現在の単純な延長線上にあるのではありませんが、今とまったくの別物でもないはずです。 今存在する、まだメジャーでない何かが発…

宇宙旅行が大富豪にも可能になった

2021年、実業家の前澤友作さんが宇宙ステーションに行って帰ってきました。これを「金持ちの道楽」と冷ややかにみる人もいます。しかし、かつて宇宙旅行は、国家に所属する特殊な専門家である宇宙飛行士にしかできませんでした。どんな大富豪にも不可能でし…

ブルシット・ジョブ=どうでもいい仕事

人類学者のデヴィッド・グレーバーが打ち出した「ブルシット・ジョブ(bullshit jobs)」という概念があります。訳せば「クソみたいな、どうでもいい仕事」ということ。グレーバーによれば、今のホワイトカラーの仕事の多くが「どうでもいい仕事」である。た…