そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

歴史

この30年余りの「失敗」「まちがい」を再点検しよう・日経平均の最高値更新

先週2月22日、日経平均株価は3万9098円の終値で、1989年末のバブル経済時代の最高値を更新しました。一応これは画期的なことといえると思います。 でも、1990年頃と比較してアメリカの株価(ダウ平均)は13~14倍になっているのに、日本は1990年頃の株価を30…

被害者意識による暴力の恐ろしさ・深刻さ

今現在のイスラエルによるガザ地区への攻撃をみていると、「被害者意識に基づく暴力の恐ろしさ・深刻さ」ということを強く感じます。 イスラエルは、直接的には2023年10月に行なわれたハマス(ガザ地区を実効支配するイスラム勢力)によるイスラエルへの越境…

『一気に流れがわかる世界史』発売

しばらく更新を休んでおりました。はてなブログのお仲間への訪問もできていないなか、告知の記事で再開というのは恐縮ですが、私そういちの新しい本が出るので、お知らせさせてください。 2月5日に、PHP文庫から『一気に流れがわかる世界史』(秋田総一郎名…

「あの戦争」を何と呼ぶか・太平洋戦争の呼称

太平洋戦争(1941~45)などの昭和の戦争の名称に関しては、いくつかの立場があります。つまり、いくつかの呼び方がある。それは、政治的立場やそれと結びついた歴史観・世界観の相違を反映しています。 じつは昭和の戦争にかぎらず「歴史的事件を何と呼ぶか…

第二次世界大戦の犠牲者数・最も犠牲が多かった国は?

第ニ次世界大戦(1939~1945)による死者は、世界全体で軍人(戦闘員)2305万人、民間人3158万人、合計5400万人余りにのぼりました。これは、第一次世界大戦(軍人・民間合計で約1800万人)を大きく上回るものでした。 *ウッドラフ『概説現代世界の歴史』ミ…

プーチンの「被害者意識による正当化」という思考回路

先日(2023年2月21日)の年次教書演説など、ロシアのプーチン大統領は「ウクライナでの紛争を煽り、犠牲を拡大させたのは、西側の権力者とウクライナの現政権だ」という発信をくり返しています。 それは要するに「自己正当化」ということですが、その「正当…

ベンジャミン・フランクリン 近代社会を精いっぱい生きた最強の独学者 

1月17日は、ベンジャミン・フランクリン(1706~1790、アメリカ)の誕生日です。 フランクリンは、ワシントン、ジェファーソンと並ぶアメリカ独立の功労者で、電気学などの科学研究や、さまざまな社会事業で活躍しました。哲学や社会科学の分野でも業績があ…

「初詣」の歴史・じつは鉄道が生んだ新しい伝統

今年の初詣は、歩いて10分ほどの近所にある小さな神社に、元旦にお参りしました。 その神社に初詣に行くのは初めてのことで、「小さな神社だから空いているだろう」と思っていました。 しかし、かなりの人たちが(おそらく近所から)集まって行列になってい…

お金を使うのはむずかしい・防衛予算増額のこと

防衛予算の増額については、今の日本周辺の情勢だと、一定程度はやむを得ないと、私も思います。しかし心配なのは、「増額した予算をうまく使えるか?」ということです。 アジア・太平洋戦争における日本軍は、軍事費の使い方が上手ではなかったようです。そ…

日中戦争とウクライナの戦争の類似・和平交渉のむずかしさについて

先日(2022年9月15日)アップした当ブログの記事で、私は日中の戦争(満州事変も含めると1931~45)の経緯を簡単に紹介し、それが今のウクライナの戦争と似たところがある、ということを述べています。 要約するとこういうことです。 以下、侵略する国=日本…

日本初の鉄道建設・そこには日本人の前向きな面があらわれている

1872年(明治5)10月14日(旧暦9月12日)、新橋~横浜間(約29キロ)を結ぶ、日本で最初の鉄道が開業しました。10月14日は「鉄道の日」。 今年(2022年)は「鉄道開業150年」ということで、記念品の販売や関連のイベントなどが行われているようです。 この記…

専制国家・中国と、多元的で「民主主義」のインド

先日(2022年9月30日)アップした当ブログの記事で、「中国は権力集中の専制構造の社会で、日本は権力分散の団体構造の社会」ということを述べました。 現代中国の研究者にも、歴史学者にも、つぎのようなことを言う人がいて、私も「そうだな」と思うのです…

「権力集中」の中国と、団体・階層ごとに権力が分散する日本

中国社会の特徴として、「トップへの権力集中」ということがあると思います。 つまり「絶対的な権力者がいて、その権力者によってバラバラな個人が束ねられる」という専制的(独裁的)構造がある。 中国は、今も昔も専制的な「皇帝」が支配する社会です。毛…

エリザベス女王の葬儀とチャーチルの戦争指導体制

エリザベス女王の葬儀(2022年9月19日)は、報道によれば1960年代から政府・王室のほか軍・警察・放送局などの関係者が、計画を練ってきたものだそうです。近年は女王自身も、その検討に加わって、詳細に希望などを伝えていた。 そして、先日その葬儀はつい…

ウクライナの戦争と日中戦争は似ている?

ロシアによるウクライナの侵攻は、日本がかつて中国で行った戦争に似ていると、最近思うようになりました。 つまり、満州事変(1931~1933)およびその後の日中戦争(1937~1945)の経緯は、今のウクライナの戦争と共通性があるのではないか。なお、満州事変…

イギリス・フランスには「関西」がない――そのことの意味は大きい

イギリス史を専門とする歴史学者・川北稔さんに「イギリスに関西はない――首都とは何か」というエッセイがあります(『イギリス 繁栄のあとさき』講談社学術文庫所収)。 「イギリスに関西はない」とは、どういう意味か。 イギリス(ここではイングランドのこ…

今日の名言 ケインズ 「無用」な専門家のコメントへの皮肉

【今日の名言】ジョン・メイナード・ケインズ(イギリスの経済学者、1883~1946) 嵐の最中、経済学者にいえることが「嵐が過ぎ去れば波はまた静まるだろう」というだけならば、彼らの仕事は無用である。 テレビや新聞などで、その手の「無用」な専門家のコ…

エリザベス2世は「最初の現代人」

英国の女王エリザベス2世(1926~2022)が、9月8日に亡くなりました。 テレビの報道で、彼女の生涯をふりかえる映像(動画)をみました。幼少期から、現在までのいろんな映像が残っている。 彼女の昔の映像をみていると私は、「本筋」のことではないかもしれ…

ゴルバチョフ・「“神はいない”と知らしめたローマ教皇」のような奇妙な人物

亡くなったソ連最後の指導者・ゴルバチョフ元大統領(1931~2022)は、どんな人物だったのか? どう評価すればいいのか? 私なりに「たとえ」として思うのは「『“神はいない”と人びとに知らしめたローマ教皇」というイメージです。 もう少しいうと「神をそれ…

独特の発達を遂げたヨーロッパのパンの美味しさ・世界のパンの大分類

今朝は、昨日買ってきた、たまに買っている専門店のパンを朝食にしました。 ヨーロッパ風の、歯ごたえのある、パンの風味をかみしめるようなパン。パンを味わうことがメインなので、パンのほかには、野菜スープとチーズを少々、あとはコーヒーだけ。 私は基…

柔軟さと寛容を失った西ローマ帝国の崩壊

ローマ帝国の西半分(西ローマ帝国)は、400年代後半に体制崩壊しました。内乱やゲルマン人の侵入がその原因です。 ゲルマン人とは、ローマ帝国周辺の辺境に住む人びとの総称で、いくつもの部族を含みます。476年にゲルマン人傭兵隊長による反乱で、西ローマ…

今日の名言 アンネ・フランク 戦争の責任は偉い人たちだけにあるのではない

【今日の名言】アンネ・フランク(ナチスの迫害の犠牲になったユダヤ人少女、1929~1945) 戦争の責任は、偉い人たちや政治家、資本家にだけにあるのではありません。名もない一般の人たちにもあるのです。 迫害を逃れて家族や何人かのユダヤ人たちと隠れ家…

小松左京のSF短編「地には平和を」・本土決戦が行われたパラレルワールド

SF作家・小松左京(1931~2011)の最初期の作品に「地には平和を」という中編があります(文庫版で50ページほどの長さで「短編」ともいえる。角川文庫『地には平和を』所収)。 太平洋戦争をテーマにした作品で、1960年(昭和35)に書かれたものです。 こ…

戦争を始めたときの、日本とアメリカの国力の比較データ

日本がアメリカなどと戦ったアジア太平洋戦争(1941年12月~45年8月、太平洋戦争、大東亜戦争とも)は「超大国アメリカに対する無謀な戦争だった」と言われます。そのことは多くの人が認識しているでしょう。 「無謀」というのは、日本とアメリカの国力の差…

戦前のエリート軍人は貧乏サラリーマンだった?・エリートをどう処遇するか

社会のなかでエリートとされる、高度の学歴や能力、権限を持つ人たちをどう処遇するか――これは重要な・むずかしい問題です。 エリートが極端に優遇される社会では、多数派の人たちの不満や無気力が強くなり、社会の活力と安定は損なわれるはずです。多くの発…

現代世界と似ている? ビザンツ帝国はどんな国だったか

「ビザンツ帝国」という国に関心があります。教科書ではマイナーな扱いですが、じつは世界史を理解するうえで重要な国です。これまでビザンツ研究の大家・井上浩一さんの著作(『ビザンツ 文明の継承と変容』京都大学学術出版会)を中心に、何冊かの本を読ん…

世界史と日本史のかかわり・世界史上で日本に影響をあたえた国は?

この記事では、世界史と日本史のかかわりについて考えます。 世界と日本のつながりをみるときは「世界史上のどの国が、日本にどのような影響を与えたか」という視点がまず重要だと、私は考えます。 どの国もそうですが、日本の社会や文化も、その歴史のなか…

大木毅『独ソ戦』・「絶滅戦争」の恐ろしさを日本人に伝えてくれる本  

先日、大木毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(岩波新書、2019年)を読みました。岩波新書の近年のヒット作。部分的には以前に読んでいたのですが、きちんと通読したのは最近です。 この記事は、「独ソ戦って何?」あるいは「聞いたことはあるが、ほとんど何も知…

建国の父がつくった小さな図書館・アメリカ議会図書館の創設

アメリカ独立を指導した「建国の父」の1人で、第3代大統領になったトマス・ジェファーソン(1743~1826)。彼は、独立当初から「連邦議会の議員の活動(調査研究など)をサポートする図書館=議会図書館」の創設に、関心を持っていました。 アメリカ建国の初…

なぜ古代ギリシアで民主政が生まれたのか・さまざまな条件が重なった例外

昨日の当ブログの記事は「古代ギリシアのアテネの民主政が、驚くほど高度に発達したものだった」というものでした。 アテネの民主政のことは学校で習うので、私たちは「知っているつもり」になっている。 しかし、多少突っ込んでその制度などを調べると、じ…