そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

デマに騙されないための大事な考え方

デマに騙されないための考え方について、科学史家・教育学者の板倉聖宣(1930~2018)は、1964年に高校生向けの雑誌に発表された文章で、こんなことを述べています。 “相手のデマや宣伝にひっかからないためには,相手の言い分にのって,こまごました議論や…

兵庫県知事選挙の結果から・何が嫌われているか

「何が嫌われているか」を見出し、それを徹底的に攻撃すること――それが現代の選挙ではきわめて重要である、ということを、このブログでは、このところ何度か述べています(都知事選やアメリカ大統領選関連の記事)。 経済成長が見込めなくなった、将来への期…

日本とアメリカの選挙・政治に影響を与える嫌悪感

10月の日本の衆議院選挙と先日のアメリカ大統領選挙を通じて、私は「今の政治を動かしている嫌悪感や憎しみは何だろうか」ということを考えました。 何かを嫌い・憎む感情が、今の政治には決定的な影響をあたえていると思うのです。現代の先進国のような、以…

系統だった政策のパッケージを

明日10月27日は衆議院選挙の投票日。誰に・どこに投票するか。 さまざまな立場の政党があります。おもな政党のそれぞれの主張には、それぞれもっともなところがあると、私は思います。この「それぞれもっともなところがある」という感覚を、私は大事にしてい…

コレクションされるモノの価値

大谷翔平選手が「50-50」を達成したときのホームランボールが、日本円で6億6千万円で落札……こういうニュースを見聞きすると、「コレクションされるモノの価値」というのは、そのモノ自体よりも、その背景にある「物語」「コンセプト」のような付加的な情報…

私の長期投資・この20年余りのこと

私は、30代だった2000年頃から株式投資をしています。 といっても、個別銘柄ではなく、株式投資を行うファンドを複数買っているのです。私が買いはじめた当時、日経平均は1万円を切っており、株式投資への関心は、今よりも低かったと思います。 その後、夫婦…

定員のある夢・オリンピックをみながら

「夢をかなえる」というときの「夢」は、「その夢にどの程度のきびしい定員があるか」という視点で分類・整理ができると思います。 つまり、「その夢・目標をかなえられる人数がどれだけ限定されているか」ということは、「夢」というものを考えるうえで大事…

ジャンヌ・ダルク 農家の娘の、国を救う戦い

「ジャンヌ・ダルクってほんとうにいたんですか」という人と話したことがあります。たしかに「伝説」っぽい人ですが、彼女は実在の人物です。 パリオリンピックが開幕します。「フランスといえばジャンヌ・ダルク(1412~1431)」ということで、彼女をごく手…

映画『ルックバック』感想・「自分の才能」と向き合う

先日、郊外のシネコンでアニメ映画『ルックバック』(押山清高監督)を、夫婦で観てきました。 人気漫画『チェンソーマン』の作者・藤本タツキによる同タイトルの短編(といっても150ページ弱あるそうです)をアニメ化したものです。「上映時間58分」という…

都知事選から思う・「何が嫌われているか」を察知することの重要性

今回の東京都知事選の結果をみて、とくに思ったのは、つぎのことです。 「政治において、与党や既得権側ではない、挑戦者あるいはアウトサイダーにつよく求められるのは、“有権者のあいだで何が嫌われているか”を察知することである」 その「嫌われている何…

ヘミングウェイ・氷山の水面下

7月2日は、作家アーネスト・ヘミングウェイ(1899~1961)の亡くなった日です(誕生日は7月21日)。 ヘミングウェイは「省略の文体」といわれる、シンプルで力強い表現で知られます。彼は自分の文章を「水上に現れる氷山の8分の1」に例えました。 書く対象…

「国家を拘束する」という憲法観と三権分立

「憲法とは、国家権力(政府)をも拘束する最高の法規である」という、古典的な憲法観を、私は信奉しています。 ただし、「そのような憲法観はもう古い」などという主張もあるようです。そこには「国家権力を法(憲法を頂点とする法体系)から解放して自由な…

じつは「知の巨人」・かこさとし

5月2日は、絵本作家かこさとし(1926~2018)の亡くなった日です。 かこは、昭和の後期~平成に「だるまちゃん」「からすのパンやさん」のシリーズや、数々の科学絵本など、生涯で600もの作品を残しました。 彼は、もともとは東京大学工学部卒の技術者です。…

インターネット空間の治安を守る「警察」が要る?

インターネットには、一般に普及し始めた頃、「国家やマスコミやその他の権威から自由な、開放的空間」というイメージがありました。ある種の「性善説」でインターネットをみていたわけです。 ところが今は、インターネットは、悪意や愚かさに満ちた、かなり…

浜口ミホ(ダイニング・キッチン開発)と三淵嘉子(「虎に翼」のモデル)

4月12日は、「日本初の女性建築家」といわれる浜口ミホ(1915~1988)の亡くなった日です。 彼女の代表作は、1950 年代に開発され大量につくられた、公団住宅(団地)のキッチンです。 当時の台所は一般に「日当たりの悪い、女中の仕事場」という位置づけで…

この30年余りの「失敗」「まちがい」を再点検しよう・日経平均の最高値更新

先週2月22日、日経平均株価は3万9098円の終値で、1989年末のバブル経済時代の最高値を更新しました。一応これは画期的なことといえると思います。 でも、1990年頃と比較してアメリカの株価(ダウ平均)は13~14倍になっているのに、日本は1990年頃の株価を30…

被害者意識による暴力の恐ろしさ・深刻さ

今現在のイスラエルによるガザ地区への攻撃をみていると、「被害者意識に基づく暴力の恐ろしさ・深刻さ」ということを強く感じます。 イスラエルは、直接的には2023年10月に行なわれたハマス(ガザ地区を実効支配するイスラム勢力)によるイスラエルへの越境…

『一気に流れがわかる世界史』発売

しばらく更新を休んでおりました。はてなブログのお仲間への訪問もできていないなか、告知の記事で再開というのは恐縮ですが、私そういちの新しい本が出るので、お知らせさせてください。 2月5日に、PHP文庫から『一気に流れがわかる世界史』(秋田総一郎名…

津田梅子・不自由な「母国」で道を切りひらいた女子留学生

明治4年、数名の少女が国費の留学生として米国に渡りました。その最年少が6歳の津田梅子(つだうめこ、1864~1929、元治元年~昭4)でした。彼女は通訳である藩士の娘で、父親は自分の娘に特別な教育(完全な英語力など)を与えたいと考えたのです。 津田梅…

「あの戦争」を何と呼ぶか・太平洋戦争の呼称

太平洋戦争(1941~45)などの昭和の戦争の名称に関しては、いくつかの立場があります。つまり、いくつかの呼び方がある。それは、政治的立場やそれと結びついた歴史観・世界観の相違を反映しています。 じつは昭和の戦争にかぎらず「歴史的事件を何と呼ぶか…

第二次世界大戦の犠牲者数・最も犠牲が多かった国は?

第ニ次世界大戦(1939~1945)による死者は、世界全体で軍人(戦闘員)2305万人、民間人3158万人、合計5400万人余りにのぼりました。これは、第一次世界大戦(軍人・民間合計で約1800万人)を大きく上回るものでした。 *ウッドラフ『概説現代世界の歴史』ミ…

ビッグモーターと前社長にこれから起きることは?「許認可」に注目

昨日、ビッグモーターの不祥事(自動車保険の不正請求など)について、テレビのワイドショーで「創業者の前社長に対し、どのような責任追及が可能か」を解説していました。 私は会社員時代に、法務・コンプライアンス関係の部署にいたことがあったせいか、こ…

映画『君たちはどう生きるか』は監督の自叙伝で、漫画版『ナウシカ』最終巻の映像化

*以下、映画についてのネタバレを含みます。まだこの映画をご覧になっていない方は、できるだけ予備知識なしでみることをおすすめします。 そもそも巨匠監督の作品を「どんな映画か」まったく知らずにみるなんて、今の時代ではなかなかできない、贅沢なこと…

すぐれた読みやすい自伝・坂本龍一『音楽は自由にする』

今年3月に亡くなった坂本龍一さん(1952~2023)の自伝『音楽は自由にする』(新潮文庫)を読みました。2009年に新潮社から出版された単行本を、つい最近(2023年5月発行として)文庫化したもの。 編集者の鈴木正文さんを聞き手として坂本さんが語ったことを…

生成型AIは「人間の精神」と「外界」のつながりを歪めるかもしれない

ChatGPTに代表される生成型AIというのは、情報の検索や整理、アイデアの検討などに役立つ道具です。そういうものとして使いこなせる人は、ぜひ使えばいいと思います。 その一方でChatGPTは「人間の精神・認識」と「外界」の関係をかく乱したり、歪めたりする…

モハメド・アリ 私たちに多くを与えてくれたアスリート

6月3日(この記事をアップした日)は、ボクサーのモハメド・アリ(1942~2016、アメリカ)の命日です。このブログでは、コンテンツの一部として、その誕生日や命日などに偉人を紹介する記事をたまにのせています。 モハメド・アリは、ボクシング史上最も有名…

チャップリン・独創ではないからこそ長く残った

山高帽、ダブダブのズボン、大きなドタ靴、ちょびヒゲ。「喜劇王」といわれた俳優・映画監督チャーリー・チャップリン(1899~1977、イギリス出身、おもにアメリカで活躍)のおなじみの扮装です。 でも、この扮装は彼の独創ではありません。その各パーツは、…

子どもたちの楽しみにおける「物語」の地位低下

「今の子どもに“物語”の楽しさや価値を伝えたい」――これはこのあいだ少しお話することがあった、ある若い国語の先生が述べていたことです。 この先生は、つぎのような話をされました。 「今の子どもは、自分が子どもだった頃(10年~10数年前)以上に、イン…

「個の力を削ぐもの」を除去するリーダー・2人の代表監督の仕事ぶり

組織のリーダーの重要な役割として、次のことがあると思います。 「“メンバー個々人が能力を発揮するうえで妨げとなる要素”が組織のなかで大きくならないように、その発生を抑えたり、小さな芽のうちに除去したりすること」 これは、サッカーワールドカップ…

久しぶりに(テレビで)野球観戦・ムダな時間を心ゆくまで楽しむ

今回のWBCで、私は久しぶりに野球の試合を(テレビの中継ですが)心ゆくまで楽しみました。 今50代後半の私は、子どもの頃(1970年代~80年頃)には、よくプロ野球のナイター中継をみたものです。とくに野球ファンというわけではなかったのですが、野球を…