そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

人物・偉人

津田梅子・不自由な「母国」で道を切りひらいた女子留学生

明治4年、数名の少女が国費の留学生として米国に渡りました。その最年少が6歳の津田梅子(つだうめこ、1864~1929、元治元年~昭4)でした。彼女は通訳である藩士の娘で、父親は自分の娘に特別な教育(完全な英語力など)を与えたいと考えたのです。 津田梅…

すぐれた読みやすい自伝・坂本龍一『音楽は自由にする』

今年3月に亡くなった坂本龍一さん(1952~2023)の自伝『音楽は自由にする』(新潮文庫)を読みました。2009年に新潮社から出版された単行本を、つい最近(2023年5月発行として)文庫化したもの。 編集者の鈴木正文さんを聞き手として坂本さんが語ったことを…

モハメド・アリ 私たちに多くを与えてくれたアスリート

6月3日(この記事をアップした日)は、ボクサーのモハメド・アリ(1942~2016、アメリカ)の命日です。このブログでは、コンテンツの一部として、その誕生日や命日などに偉人を紹介する記事をたまにのせています。 モハメド・アリは、ボクシング史上最も有名…

チャップリン・独創ではないからこそ長く残った

山高帽、ダブダブのズボン、大きなドタ靴、ちょびヒゲ。「喜劇王」といわれた俳優・映画監督チャーリー・チャップリン(1899~1977、イギリス出身、おもにアメリカで活躍)のおなじみの扮装です。 でも、この扮装は彼の独創ではありません。その各パーツは、…

ベンジャミン・フランクリン 近代社会を精いっぱい生きた最強の独学者 

1月17日は、ベンジャミン・フランクリン(1706~1790、アメリカ)の誕生日です。 フランクリンは、ワシントン、ジェファーソンと並ぶアメリカ独立の功労者で、電気学などの科学研究や、さまざまな社会事業で活躍しました。哲学や社会科学の分野でも業績があ…

ハワード・ヒューズという究極の不幸な金持ち

12月24日のクリスマス・イブになると、私はこの日が誕生日の、ある大富豪のことを思い出します。 20世紀のアメリカにハワード・ヒューズ(1905~1976)という大富豪がいました。彼は早死にした父親が創業した機械メーカーを18歳で相続し、その後まもなく、会…

虫プロ倒産のときに手塚治虫を救った、ある社長のこと

マンガ家・手塚治虫は、「虫プロダクション」というアニメーションスタジオを設立し、経営していました。 虫プロは、日本初の(毎週30分放映の)テレビアニメのシリーズである『鉄腕アトム』(1963~66放映)をはじめ、手塚治虫原作の作品を中心にいくつもの…

よく働き、よく学ぶ・エジソンが発明家として独立するまで

10月18日は発明王トマス・エジソン(1847~1931)の命日です。エジソンの葬儀が行われた1931年10月21日の夜、全米で彼の功績をたたえて1分間電灯を消すということが(どこまで完全に行われたかは別にして)実施されました。 エジソンは「よく働き、よく学ん…

ボーア研究所のコペンハーゲン精神(わけへだてのない協力・自由な討議・ゆとりとユーモア)

「量子力学」の建設者、ニールス・ボーア(1885~1962、デンマーク)は、アインシュタインと並んで、20世紀を代表する物理学者だといわれます。 でも「量子力学とは何か」をきちんと説明する能力が私にはありません。とりあえず「現代物理学の重要な領域で、…

ル・コルビュジエ・「無名の若者が巨匠になるまで」の典型

ル・コルビュジエ(1887~1965)は、20世紀を代表する建築家です。なお、ル・コルビュジエはペンネームで、本名はシャルル・エドゥアール・ジャンヌレといいます。10月6日は、彼の誕生日。 彼は、数々の邸宅や公共建築のほか、大風呂敷な都市計画などで知ら…

『指輪物語』の初版は何部だった?・マイナーから興隆したファンタジー

最近、ハンフリー・カーペンター『J.R.R.トールキン 在る伝記』(評論社、1982年、菅原啓州訳)を読みました。 トールキン(1892~1973)は『指輪物語』(映画「ロード・オブ・ザ・リング」の原作、最初の巻は1954年刊)を書いたイギリスの作家。 この本でと…

かこさとし展・かこさとしという「知の巨人」

先日、Bunkamura ザ・ミュージアムで「かこさとし展」(かこさとし展 子どもたちに伝えたかったこと)をみてきました。 かこさとし(加古里子、1926~2018)は、昭和の高度成長期から平成にかけて活躍した著名な絵本作家。「だるまちゃん」シリーズや『から…

ゴルバチョフ・「“神はいない”と知らしめたローマ教皇」のような奇妙な人物

亡くなったソ連最後の指導者・ゴルバチョフ元大統領(1931~2022)は、どんな人物だったのか? どう評価すればいいのか? 私なりに「たとえ」として思うのは「『“神はいない”と人びとに知らしめたローマ教皇」というイメージです。 もう少しいうと「神をそれ…

自分の町を出たことがなくても、世界を語ったカント

「ドイツ観念論」の大哲学者イマニュエル・カント(1724~1804)は、大学で哲学のほかに地理学の講義も行いました。その講義は大好評で、多くの学生や市民が聴講しました。彼は世界の町や自然を、目に浮かぶように生き生きと語りました。 しかしカントは、生…

今日の名言 ナポレオン 6万の兵に私が加われば…… ナポレオンの功績は何?

【今月の名言】ナポレオン・ボナパルト(近代フランスの基礎を築いた軍人・政治家、1769~1821) 6万の兵に私が加われば、16万の兵力に相当する。 1814年に、敵であるヨーロッパ諸国の連合軍25万に対し6万の兵力を率いて戦い、勝利したときのナポレオンの言…

今日の名言 司馬遼太郎の遺産(残した財産の内訳)からみえるもの

司馬遼太郎(1923~1996)は、『坂の上の雲』『竜馬がゆく』など数多くの歴史小説や『街道をゆく』などのエッセイを残し、幅広い読者を得た大作家でした。 8月7日は司馬の誕生日。さっきある方のブログで知りましたが『ドラえもん』ののび太も、同じ日が誕生…

「太陽の塔」という幸せなプロジェクト

先日、NHKの『歴史探偵』という番組で、1970年の大阪万博の「太陽の塔」についてやっていました。戦国時代や幕末などのいかにも「歴史」という感じではないテーマは、この番組ではめずらしい。 太陽の塔については、私も関心があります。この番組の内容と…

大原孫三郎と「大正の社会実験」・知恵とセンスと想いを込めてお金を使う

7月28日は、大正~昭和初期の実業家・大原孫三郎(1880~1943)の誕生日です。 大原は地元の倉敷(岡山県)で、親から受け継いだ会社(倉敷紡績など)を経営しながら、孤児院、社会問題の研究所、総合病院、美術館などの社会事業を手がけました。 大原がおも…

真理がたどった物語・メンデルやコペルニクスの史実と『チ。-地球の運動について-』最終巻が描く歴史の真実

本棚から取り出して、昔に買った古い新書を読みました。中沢信午『遺伝学の誕生 メンデルを生んだ知的風土』(中公新書、1985)――「遺伝の法則」を発見したグレゴール・メンデル(1822~1884、オーストリア)の評伝です。今年(2022年)はメンデル生誕200年…

フランツ・カフカ 発表できなくても野心作を書き続ける

7月3日は作家のフランツ・カフカ(1883~1924、チェコ)の誕生日。 カフカは、「変身」などの前衛的な作品で20世紀文学に多大な影響を与えた大作家です。でも彼は、生前はほとんど無名でした。大学時代に小説を書き始めましたが、作家としてすぐには芽が出ま…

アメリカに勝利した男 ホー・チ・ミン・「徹底抗戦」をどう考えるか

先日私は、現代史についての(大人向けの)世界史セミナーで、講師をつとめました。 私の講演のあとフリートークとなり、ウクライナの戦争について、参加者の1人からこんな発言がありました――「ウクライナの徹底抗戦は、多くの犠牲を生むことになる。戦いを…

「タフで強い三蔵法師」のドラマがみたい

先日、だらだらしているときに、本棚から前嶋信次『玄奘三蔵ー史實西遊記ー』(岩波新書、1952)を、ふと取り出して読み返しました。東洋史の大家による、歴史上の人物としての玄奘三蔵(三蔵法師)伝。 今から70年前の新書で、10年以上前に古書店の安売りの…

ガリレオが否定しても地球は回っている・真理は「宣言」では決まらない

ガリレオ・ガリレイ(1564~1642)は、聖書の教えに反する「地動説」を主張したとして、ローマ教皇庁の宗教裁判にかけられました。これは、多くの方がご存じと思います。 このときとくに問題とされたのは、宗教裁判の前年(1632年)に出版され、真正面から地…

最後の「20世紀の巨人」・ポール・マッカートニー

今日(2022年6月18日)、ポール・マッカートニー(1942~)が80歳の誕生日を迎えました。 特別なファンというわけではありませんが、ポール・マッカートニーという人は、最後の「20世紀の巨人」だと私は思います。あるいは「現存する世界最大の文化人」とい…

アダム・スミスとケインズの誕生日は同じ・6月5日を「経済学の日」にしては?

『国富論』の著者アダム・スミス(1723~1790)と、「20世紀最大の経済学者」と言われるジョン・メイナード・ケインズ(1883~1946)は、時代は異なりますが、生まれた日は2人とも6月5日です。 2人は経済学の歴史のなかで「2大巨頭」といえる存在(また2人と…

「国の病気」を治したい・後藤新平のこと

日本で、政府による福祉や公衆衛生などへの取り組みが本格的に始まったのは、明治の後半から大正にかけてのことでした。たとえば病院の整備、下水処理、貧しい人への支援、公営住宅、託児所等々の事業です。 「国鉄」のもとになる組織ができたのも、その頃で…

「本格派の女優」をめざして努力したマリリン・モンロー

6月1日はマリリン・モンロー(1926~1962)の誕生日。おもに1950年代に活躍し、今も語り継がれる映画女優。 その「死の謎」や、いくつものゴシップもありますが、20世紀半ばの時代を象徴するアイドルとして特別な存在です。 彼女(本名はノーマ・ジーン・モ…

歴史上の偉人に敬称は要らないはずでは?

テレビで話す人が「太宰治さん」「湯川秀樹さん」「渋沢栄一さん」などと、歴史上の偉人(とくに近現代の偉人)を「さん」付けで呼ぶのを聞くことがあります。 私はそれがちょっと気になります。偉人などの歴史上の人物に敬称は要らない、というのが(活字の…

アメリカ独立革命で、建国の父たちは去っていった

アメリカ大統領の来日ということで、今回はアメリカ史のことを。その中の評価できる・前向きな面について。 アメリカ独立革命(1776年~)を指導した「建国の父」であるジョージ・ワシントンやトマス・ジェファーソン。彼らはそれぞれ初代・第3代の合衆国大…

「理想の村」のむずかしさ

5月14日は、共産主義の運動家ロバート・オウエン(1771~1858、イギリス)の生まれた日。 オウエンは、裸一貫から身をおこし、紡績工場の経営者として事業を成功させました。そしてそれだけでなく、労働者の待遇改善や教育・啓蒙にも熱心に取り組みました。 …