そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

定員のある夢・オリンピックをみながら

「夢をかなえる」というときの「夢」は、「その夢にどの程度のきびしい定員があるか」という視点で分類・整理ができると思います。

つまり、「その夢・目標をかなえられる人数がどれだけ限定されているか」ということは、「夢」というものを考えるうえで大事な要素です。

そのような「定員」が最もきびしいのが、スポーツ競技の世界です。

オリンピックで金メダルがとれるのは、世界でたった1人。オリンピックに出場できる枠も、きびしく限定されています。

「夢をかなえました!夢はかなう!」と、金メダルをとった選手(とくに日本選手)が喜ぶ姿は、やはりみていてうれしいです。

しかし、その夢をかなえられるのは、世界でたった1人。「ほかの大勢は、夢をかなえられなかった」ということも、私はつい思ってしまいます。

じっさい、夢破れた選手の落胆する姿を、私たちは何度もみてきました。今回のオリンピックでも、印象的なシーンがいくつかありました。

「かなえられる定員は世界で1人(あるいはごく少数)」という点で、オリンピックでの栄冠という「夢」は、非常に特異な「夢」なのでしょう。

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もちろん世の中には、「オリンピックでの栄冠」よりも、定員がゆるやかな「夢」もあります。

「ある競技でプロの選手になって成功する」→「ある競技で(とにかく)プロになる」→「指導者や関係者として職を得る」……

以上は「定員がきびしい順」で並べたのですが、定員がゆるやかになるほど、「夢」よりも「現実」の要素が大きくなっていきます。

しかしそうはいっても、「ある競技の指導者になる」といったことも、誰もができるわけではありません。相当な鍛錬や就職活動などが必要です。

自分にうまく合うかたちで、「それなりの定員のある夢」を見出し、そこに向かって頑張れると、人生はかなり充実するのではないかと思います。

その過程で「夢」は修正されていくはずです。「定員」がより厳しい方向へいく場合もあれば、緩やかな方向へ修正される場合もあるでしょう。

でも、とにかく目標や夢を失わないという人が、世の中にはいるわけです。それはやはり幸せなことだと思います。

だがしかし、この世界には「それなりの定員の夢」ではなく、「世界でたった1人」という、最もきびしい定員の「特異な夢」を必死に追いかける人たちがいます。

そういう人たちも、もちろん必要です。そして、その姿を、近頃の私はテレビ中継で毎日みているわけです。

 

私そういちの著書。2024年2月刊のPHP文庫。