そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

現代社会・時事

民主主義の優位を主張する「歴史の終わり」論は、まちがっていたのか?

ソ連などの社会主義体制が崩壊した「冷戦終結」の頃(1990年代初頭)のこと。西欧やアメリカの体制を典型とする「リベラルな民主主義」の優位性を主張する「歴史の終わり」論が、話題になったことがあります。 フランシス・フクヤマ(1952~)というアメリカ…

アメリカの鎖国を描いた「マンハッタンの黒船」という1970年代のマンガ

諸星大二郎のマンガで「マンハッタンの黒船」という短編があります。1978年に『別冊少年ジャンプ』に掲載された作品。 198X年に、アメリカ合衆国は鎖国を断行。その99年後に縁井(へりい)提督率いる日本の黒船(巨大な原子力艦)がマンハッタンに来航して開…

カルトの「説明力」という魅力にご用心

オウムによる地下鉄サリン事件から30年。 私は当時若いサラリーマンで、仕事の傍ら哲学や歴史の本を読むのが、大事な生きがいや逃げ場でした。一応は会社生活になじんでいましたが、違和感もかなり感じていました(のちに40代の時、私は起業するために会社を…

「管理者」「中間管理職」たちの記者会見

さきほどまで16時頃から3時間くらい、まだ続いているフジテレビの記者会見の放送をみていました。 私がとくに感じたのは、「この社会では、“ほんとうの権力者”は、きわめて稀な存在である」ということです。 つまり、真の意味で「自分だけが自分の主人であり…

デマに騙されないための大事な考え方

デマに騙されないための考え方について、科学史家・教育学者の板倉聖宣(1930~2018)は、1964年に高校生向けの雑誌に掲載された文章で、こんなことを述べています。 “相手のデマや宣伝にひっかからないためには,相手の言い分にのって,こまごました議論や…

兵庫県知事選挙の結果から・何が嫌われているか

「何が嫌われているか」を見出し、それを徹底的に攻撃すること――それが現代の選挙ではきわめて重要である、ということを、このブログでは、このところ何度か述べています(都知事選やアメリカ大統領選関連の記事)。 経済成長が見込めなくなった、将来への期…

日本とアメリカの選挙・政治に影響を与える嫌悪感

10月の日本の衆議院選挙と先日のアメリカ大統領選挙を通じて、私は「今の政治を動かしている嫌悪感や憎しみは何だろうか」ということを考えました。 何かを嫌い・憎む感情が、今の政治には決定的な影響をあたえていると思うのです。現代の先進国のような、以…

系統だった政策のパッケージを

明日10月27日は衆議院選挙の投票日。誰に・どこに投票するか。 さまざまな立場の政党があります。おもな政党のそれぞれの主張には、それぞれもっともなところがあると、私は思います。この「それぞれもっともなところがある」という感覚を、私は大事にしてい…

コレクションされるモノの価値

大谷翔平選手が「50-50」を達成したときのホームランボールが、日本円で6億6千万円で落札……こういうニュースを見聞きすると、「コレクションされるモノの価値」というのは、そのモノ自体よりも、その背景にある「物語」「コンセプト」のような付加的な情報…

私の長期投資・この20年余りのこと

私は、30代だった2000年頃から株式投資をしています。 といっても、個別銘柄ではなく、株式投資を行うファンドを複数買っているのです。私が買いはじめた当時、日経平均は1万円を切っており、株式投資への関心は、今よりも低かったと思います。 その後、夫婦…

都知事選から思う・「何が嫌われているか」を察知することの重要性

今回の東京都知事選の結果をみて、とくに思ったのは、つぎのことです。 「政治において、与党や既得権側ではない、挑戦者あるいはアウトサイダーにつよく求められるのは、“有権者のあいだで何が嫌われているか”を察知することである」 その「嫌われている何…

「国家を拘束する」という憲法観と三権分立

「憲法とは、国家権力(政府)をも拘束する最高の法規である」という、古典的な憲法観を、私は信奉しています。 ただし、「そのような憲法観はもう古い」などという主張もあるようです。そこには「国家権力を法(憲法を頂点とする法体系)から解放して自由な…

インターネット空間の治安を守る「警察」が要る?

インターネットには、一般に普及し始めた頃、「国家やマスコミやその他の権威から自由な、開放的空間」というイメージがありました。ある種の「性善説」でインターネットをみていたわけです。 ところが今は、インターネットは、悪意や愚かさに満ちた、かなり…

この30年余りの「失敗」「まちがい」を再点検しよう・日経平均の最高値更新

先週2月22日、日経平均株価は3万9098円の終値で、1989年末のバブル経済時代の最高値を更新しました。一応これは画期的なことといえると思います。 でも、1990年頃と比較してアメリカの株価(ダウ平均)は13~14倍になっているのに、日本は1990年頃の株価を30…

被害者意識による暴力の恐ろしさ・深刻さ

今現在のイスラエルによるガザ地区への攻撃をみていると、「被害者意識に基づく暴力の恐ろしさ・深刻さ」ということを強く感じます。 イスラエルは、直接的には2023年10月に行なわれたハマス(ガザ地区を実効支配するイスラム勢力)によるイスラエルへの越境…

ビッグモーターと前社長にこれから起きることは?「許認可」に注目

昨日、ビッグモーターの不祥事(自動車保険の不正請求など)について、テレビのワイドショーで「創業者の前社長に対し、どのような責任追及が可能か」を解説していました。 私は会社員時代に、法務・コンプライアンス関係の部署にいたことがあったせいか、こ…

生成型AIは「人間の精神」と「外界」のつながりを歪めるかもしれない

ChatGPTに代表される生成型AIというのは、情報の検索や整理、アイデアの検討などに役立つ道具です。そういうものとして使いこなせる人は、ぜひ使えばいいと思います。 その一方でChatGPTは「人間の精神・認識」と「外界」の関係をかく乱したり、歪めたりする…

子どもたちの楽しみにおける「物語」の地位低下

「今の子どもに“物語”の楽しさや価値を伝えたい」――これはこのあいだ少しお話することがあった、ある若い国語の先生が述べていたことです。 この先生は、つぎのような話をされました。 「今の子どもは、自分が子どもだった頃(10年~10数年前)以上に、イン…

「個の力を削ぐもの」を除去するリーダー・2人の代表監督の仕事ぶり

組織のリーダーの重要な役割として、次のことがあると思います。 「“メンバー個々人が能力を発揮するうえで妨げとなる要素”が組織のなかで大きくならないように、その発生を抑えたり、小さな芽のうちに除去したりすること」 これは、サッカーワールドカップ…

プーチンの「被害者意識による正当化」という思考回路

先日(2023年2月21日)の年次教書演説など、ロシアのプーチン大統領は「ウクライナでの紛争を煽り、犠牲を拡大させたのは、西側の権力者とウクライナの現政権だ」という発信をくり返しています。 それは要するに「自己正当化」ということですが、その「正当…

「公助」を使うのも主体性・「間違った自助努力」に気をつける

自分で頑張るだけでなく、周囲や、あるいは社会による支援に頼ることをどう考えるか? 「自助」「共助」「公助」という言葉もありますが、それらの関係や優先順位についてどう考えるか? これは、現代社会において人生に大きな影響をあたえる事項のひとつで…

いつまでもいると思うな・高橋幸宏さんの言葉

「いつまでもいると思うな高橋幸宏」――これは先日(2023年1月11日に)亡くなったYMOの高橋幸宏さん自身が数年前に述べた言葉です。 2016年11月に、バンドMETAFIVEの一員として生出演した朝のワイドショー『スッキリ‼』で、高橋さんはそう言っていました(ど…

【新年の名言】星新一 ことしもまたごいっしょに宇宙旅行をしましょう

星新一(作家、1926~1997)がある年に友人たちに送った年賀状にはこう書かれていたそうです。 ことしもまたごいっしょに九億四千万キロメートルの宇宙旅行をいたしましょう。これは地球が太陽のまわりを一周する距離です。速度は秒速二十九・七キロメートル…

2022年の世界と日本と当ブログをふり返る・「生き残りたい」

2022年最後の更新です。今年の世界・日本の出来事をふり返りながら、その出来事についての当ブログの記事を紹介します。そこで「当ブログの2022年のふり返り」でもあります。 もくじ ロシアによるウクライナ侵攻 安倍元首相殺害 中国における新型コロナ対策 …

世界における「移民」「難民」の大まかで基本的な数字

「移民」「難民」のことは、世界情勢を理解するうえで非常に重要なはずですが、私たちはそれについては(世界情勢に関するほかのこととくらべても)まったく知識が足りないように思います。 この記事では、世界における「移民」「難民」についてのごく大まか…

お金を使うのはむずかしい・防衛予算増額のこと

防衛予算の増額については、今の日本周辺の情勢だと、一定程度はやむを得ないと、私も思います。しかし心配なのは、「増額した予算をうまく使えるか?」ということです。 アジア・太平洋戦争における日本軍は、軍事費の使い方が上手ではなかったようです。そ…

「大国・先進国ばかり」ではないのが、サッカーのワールドカップ

オリンピックと比較したときのサッカーのワールドカップ(以下単にワールドカップ)の特徴として、「大国・先進国ばかりが強いわけではない」ということがあると思います。 いわば「サッカーにおける平等」が、限界はあるものの、かなり成立しています。 た…

日中戦争とウクライナの戦争の類似・和平交渉のむずかしさについて

先日(2022年9月15日)アップした当ブログの記事で、私は日中の戦争(満州事変も含めると1931~45)の経緯を簡単に紹介し、それが今のウクライナの戦争と似たところがある、ということを述べています。 要約するとこういうことです。 以下、侵略する国=日本…

専制国家・中国と、多元的で「民主主義」のインド

先日(2022年9月30日)アップした当ブログの記事で、「中国は権力集中の専制構造の社会で、日本は権力分散の団体構造の社会」ということを述べました。 現代中国の研究者にも、歴史学者にも、つぎのようなことを言う人がいて、私も「そうだな」と思うのです…

「職業教育を重視した多様な学校教育」を60年前の政府は考えていた?

先日友人と、社会や歴史についての長時間の会話をしていて、日本の教育の話題になりました。友人はこんなことを言いました。 「同じような学校教育を、大半の子どもたちが小学校から大学まで10数年間も受け続けるなんておかしい」 「多くの子どもたちは、高…