そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

現代社会・時事

「権力集中」の中国と、団体・階層ごとに権力が分散する日本

中国社会の特徴として、「トップへの権力集中」ということがあると思います。 つまり「絶対的な権力者がいて、その権力者によってバラバラな個人が束ねられる」という専制的(独裁的)構造がある。 中国は、今も昔も専制的な「皇帝」が支配する社会です。毛…

「分断」のある幸せと心配

昨日の安倍元総理の国葬についての報道を、テレビでみました。 献花のための長い列、その一方で反対派のデモ。反対派のデモは警察官に誘導されていました。デモに対し怒りをあらわにして暴れようとする賛成派の人もいましたが、警察官がなだめて制止している…

GDPとは「総買い物額」だと理解しよう

最近、つぎのような報道が出て、ネット上でも話題になっていました。たとえば日経新聞(2022年9月19日)では「止まらぬ円安、縮む日本」という見出しでこう報じています。 《ドル建てでみた日本が縮んでいる。1ドル=140円換算なら2022年の名目国内総生産(GD…

『指輪物語』の初版は何部だった?・マイナーから興隆したファンタジー

最近、ハンフリー・カーペンター『J.R.R.トールキン 在る伝記』(評論社、1982年、菅原啓州訳)を読みました。 トールキン(1892~1973)は『指輪物語』(映画「ロード・オブ・ザ・リング」の原作、最初の巻は1954年刊)を書いたイギリスの作家。 この本でと…

エリザベス女王の葬儀とチャーチルの戦争指導体制

エリザベス女王の葬儀(2022年9月19日)は、報道によれば1960年代から政府・王室のほか軍・警察・放送局などの関係者が、計画を練ってきたものだそうです。近年は女王自身も、その検討に加わって、詳細に希望などを伝えていた。 そして、先日その葬儀はつい…

そもそも「元首」とは? 元首にもいくつかのパターンがある

エリザベス女王の葬儀(2022年9月19日)の海外からの参列者は、女王が「元首」であることから、それに対応する各国の元首になるとのことです。 では、そもそも元首とは何か? 元首とは、国家のトップのうち「国を代表または象徴する存在」のこと。 そして「…

今日の日経新聞のあちこちにみられる「衰退する日本」

最近の日経新聞(朝刊)を読んでいると、「この日の新聞は、まるで『衰退する日本』をテーマに特集しているみたいだ」と思えることが、ときどきあります。 もちろん、そんな「特集」を組んでいるわけではありません。 でも、ざっと眺めただけで、「衰退する…

柔軟さと寛容を失った西ローマ帝国の崩壊

ローマ帝国の西半分(西ローマ帝国)は、400年代後半に体制崩壊しました。内乱やゲルマン人の侵入がその原因です。 ゲルマン人とは、ローマ帝国周辺の辺境に住む人びとの総称で、いくつもの部族を含みます。476年にゲルマン人傭兵隊長による反乱で、西ローマ…

「私的なテロ」の時代・「テロへの共感」に気をつける

安倍元首相の殺害事件から、もうすぐ4週間が経とうとしています。いろんな事実が明らかになり、人びとや識者のいろんな反応・主張をみていると、いくつか気になること、「それはどうなんだろう」と思えることもある。 ひとつは、「政治的な主張に基づく犯行…

戦前のエリート軍人は貧乏サラリーマンだった?・エリートをどう処遇するか

社会のなかでエリートとされる、高度の学歴や能力、権限を持つ人たちをどう処遇するか――これは重要な・むずかしい問題です。 エリートが極端に優遇される社会では、多数派の人たちの不満や無気力が強くなり、社会の活力と安定は損なわれるはずです。多くの発…

大原孫三郎と「大正の社会実験」・知恵とセンスと想いを込めてお金を使う

7月28日は、大正~昭和初期の実業家・大原孫三郎(1880~1943)の誕生日です。 大原は地元の倉敷(岡山県)で、親から受け継いだ会社(倉敷紡績など)を経営しながら、孤児院、社会問題の研究所、総合病院、美術館などの社会事業を手がけました。 大原がおも…

日本にもっと大規模な、本格的なミュージアムを

今日は夫婦で上野の森へ行ってきました。東京都美術館で開催されている「毎日書道展」をみるためです。書道展として最も代表的なもののひとつ。妻が書道教室を営む書道の先生で、自分やお仲間が毎年出品している。この書道展に行くのは年中行事です。 書道展…

世界史と日本史のかかわり・世界史上で日本に影響をあたえた国は?

この記事では、世界史と日本史のかかわりについて考えます。 世界と日本のつながりをみるときは「世界史上のどの国が、日本にどのような影響を与えたか」という視点がまず重要だと、私は考えます。 どの国もそうですが、日本の社会や文化も、その歴史のなか…

今日の名言 現実を正視する勇気 『第一次経済白書』より

【今日の名言】『第一次経済白書』(経済安定本部、1947年発行)より われわれは従来まで、ともすれば、現実を正視する勇気にかけていた。 終戦直後のきびしい経済状況を報告した白書の言葉です。 この白書は「第一次」、つまり最初に発行された経済白書です…

「長老」が力を持つ日本の政治・独裁も改革も阻む体制

日本の政治では、自民党の派閥トップのような長老政治家の影響力は大きいです。現職の総理大臣でも、有力な長老に配慮しなければならないことが多々あるわけです。 先日亡くなった安倍元総理は、自民党最大派閥のトップであり、現在における代表的な「長老」…

非建設的な、マイナスのエネルギーの恐ろしさ・安倍元首相死去

昨日の安倍元首相が殺害された事件に、たいへん衝撃を受け、ご冥福を祈る気持ちとともに、つよい怒りを覚えました。 事件の背景や犯人の動機などは、まだよくわからないわけですが、とにかく非建設的な、マイナスのエネルギーというものを感じます。こういう…

民主主義が「現代の奴隷」を生む?

世界史の流れは、かつては広くみられた奴隷的な人びとを、少数の例外にしていきました。とくに現代の先進国ではそうなっている。 しかし現代にも奴隷はいます。例えば借金返済のため、違法な奴隷的労働を強いられる人たち。 そして、奴隷をもっと広く「意志…

ウクライナの壮絶な歴史

今日は、私の世界史専門ブログ「そういち総研」に、ウクライナの歴史を簡略にまとめた記事をアップしました。 ウクライナという国は、大国が奪い合う「狭間の国」として、壮絶な歴史を歩んできました。それを「ウクライナという地域の支配がどのように移り変…

個人情報が徹底的に守られる社会・『ゲド戦記』の世界から

「数十万人分の個人情報を記録した、市役所のUSBメモリー紛失」というニュース。これには、その市の住民だけでなく、かなりの人が不安や恐れを感じているようです。 「個人情報は、厳格に管理され、守られるべき」ということが、すっかり社会に浸透している…

初心者のための、リベラルと保守、ポピュリズムの基礎知識

リベラルと保守――両者は政治的な立場の代表的なものです。 リベラル(リベラリズム)とは、個人の自由を重視する立場。人は古い価値観や慣習から解放されるべきである。たとえば妊娠中絶、LGBTは生き方の自由に属することで、皆がしたいようにすべきと考える…

中古レコードが海外に買い叩かれる?・野村訓市さんのラジオから

日曜の夜は、たいていラジオを聴いています。大河ドラマも好きなのですが、録画でみています。 昨日(2022年6月19日)は20時からJ-WAVEで「TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING」という番組を聴きました。DJの野村訓市さんの語りや選んだ音楽が気に入って、この…

給料はあなたの市場価値ではなく、権力の力学で決まる・ローゼンフェルド『給料はあなたの価値なのか』

この社会において「給料は何によって決まるか」「この人がなぜこの給料なのか」という問題――これは、人の生き方や価値観と深く関わるところがあります。 そこで感情的な要素も入ってくる。また、その人の立場によって給料についての経験や見聞はちがう。つま…

日本の少子化と、リスク回避志向=「損をしたくない」気持ち

先週、テレビのニュースや新聞では、6月3日に厚労省が発表した最新の出生率について報じていました(出生率=合計特殊出生率、1人の女性が生涯に産む子供の数)。 日経新聞(6月4日土曜日朝刊)の1面の記事にも、このことは出ていました。2021年の日本の出生…

「国の病気」を治したい・後藤新平のこと

日本で、政府による福祉や公衆衛生などへの取り組みが本格的に始まったのは、明治の後半から大正にかけてのことでした。たとえば病院の整備、下水処理、貧しい人への支援、公営住宅、託児所等々の事業です。 「国鉄」のもとになる組織ができたのも、その頃で…

現代におけるコミュニティの衰退・パットナム『孤独なボウリング』を今あらためて読む

よく言われることではありますが、現代社会(先進国)で顕著な変化のひとつに「コミュニティの衰退と個人主義化」があるでしょう。人びとが従来的なコミュニティのつながりを失って、ばらばらの個人になっていく――これは私たちの多くが感じているはずです。 …

「誤送金」の事件で社会について学ぶ

最近、テレビのワイドショーをみると阿武町の誤送金事件のことを毎日のようにやっています。ネットでもいろいろ取り上げられている。 私は当初それを多少眺めるくらいで、あまり関心を持っていませんでした。「あいつは悪い奴」「いやこっちが悪い」みたいな…

「文化」を繁栄の基盤にした衰退期のベネチアに学ぼう

今の日本にとって最重要の長期的課題は「これからの繁栄の基盤をどうするか」ということではないでしょうか? この数十年の日本の繁栄の基盤は、「家電や自動車などの工業製品をつくり、輸出すること」でした。 しかし、この基盤は近年かなり揺らいでいます…

戦争という破壊がもたらした平等化

歴史学者のウォルター・シャイデルによる、世界上のさまざまな「破壊がもたらした平等化」を扱った『暴力と不平等の人類史』(東洋経済新報社、2019年、原著2017年、鬼澤忍・塩原通緒訳)という本があります。 その本では、アジア太平洋戦争による「平等化」…

「技術革新がペースダウンしている」という説

美術・音楽・文学などのさまざまな表現で、20世紀末以降「新しいものが生まれにくくなっている」ということは、専門家やマニアのあいだでたまに言われます。私もそのように思っている1人。 ただ、文化的な領域で「何が新しいか」は、感覚的・主観的なところ…

「シン・ウルトラマン」をみた・社会の変化がゆっくりになっている

映画「シン・ウルトラマン」をみてきました。いろんな評価があるようですが、私は楽しい時間を過ごすことができました。50代後半の、初代ウルトラマンに夢中になった世代だからでしょう。 あの映画は、そういう世代のための「ウルトラマン祭り」です。「世界…