そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

現代社会・時事

日本にもっと大規模な、本格的なミュージアムを

今日は夫婦で上野の森へ行ってきました。東京都美術館で開催されている「毎日書道展」をみるためです。書道展として最も代表的なもののひとつ。妻が書道教室を営む書道の先生で、自分やお仲間が毎年出品している。この書道展に行くのは年中行事です。 書道展…

世界史と日本史のかかわり・世界史上で日本に影響をあたえた国は?

この記事では、世界史と日本史のかかわりについて考えます。 世界と日本のつながりをみるときは「世界史上のどの国が、日本にどのような影響を与えたか」という視点がまず重要だと、私は考えます。 どの国もそうですが、日本の社会や文化も、その歴史のなか…

今日の名言 現実を正視する勇気 『第一次経済白書』より

【今日の名言】『第一次経済白書』(経済安定本部、1947年発行)より われわれは従来まで、ともすれば、現実を正視する勇気にかけていた。 終戦直後のきびしい経済状況を報告した白書の言葉です。 この白書は「第一次」、つまり最初に発行された経済白書です…

「長老」が力を持つ日本の政治・独裁も改革も阻む体制

日本の政治では、自民党の派閥トップのような長老政治家の影響力は大きいです。現職の総理大臣でも、有力な長老に配慮しなければならないことが多々あるわけです。 先日亡くなった安倍元総理は、自民党最大派閥のトップであり、現在における代表的な「長老」…

非建設的な、マイナスのエネルギーの恐ろしさ・安倍元首相死去

昨日の安倍元首相が殺害された事件に、たいへん衝撃を受け、ご冥福を祈る気持ちとともに、つよい怒りを覚えました。 事件の背景や犯人の動機などは、まだよくわからないわけですが、とにかく非建設的な、マイナスのエネルギーというものを感じます。こういう…

民主主義が「現代の奴隷」を生む?

世界史の流れは、かつては広くみられた奴隷的な人びとを、少数の例外にしていきました。とくに現代の先進国ではそうなっている。 しかし現代にも奴隷はいます。例えば借金返済のため、違法な奴隷的労働を強いられる人たち。 そして、奴隷をもっと広く「意志…

ウクライナの壮絶な歴史

今日は、私の世界史専門ブログ「そういち総研」に、ウクライナの歴史を簡略にまとめた記事をアップしました。 ウクライナという国は、大国が奪い合う「狭間の国」として、壮絶な歴史を歩んできました。それを「ウクライナという地域の支配がどのように移り変…

個人情報が徹底的に守られる社会・『ゲド戦記』の世界から

「数十万人分の個人情報を記録した、市役所のUSBメモリー紛失」というニュース。これには、その市の住民だけでなく、かなりの人が不安や恐れを感じているようです。 「個人情報は、厳格に管理され、守られるべき」ということが、すっかり社会に浸透している…

初心者のための、リベラルと保守、ポピュリズムの基礎知識

リベラルと保守――両者は政治的な立場の代表的なものです。 リベラル(リベラリズム)とは、個人の自由を重視する立場。人は古い価値観や慣習から解放されるべきである。たとえば妊娠中絶、LGBTは生き方の自由に属することで、皆がしたいようにすべきと考える…

中古レコードが海外に買い叩かれる?・野村訓市さんのラジオから

日曜の夜は、たいていラジオを聴いています。大河ドラマも好きなのですが、録画でみています。 昨日(2022年6月19日)は20時からJ-WAVEで「TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING」という番組を聴きました。DJの野村訓市さんの語りや選んだ音楽が気に入って、この…

給料はあなたの市場価値ではなく、権力の力学で決まる・ローゼンフェルド『給料はあなたの価値なのか』

この社会において「給料は何によって決まるか」「この人がなぜこの給料なのか」という問題――これは、人の生き方や価値観と深く関わるところがあります。 そこで感情的な要素も入ってくる。また、その人の立場によって給料についての経験や見聞はちがう。つま…

日本の少子化と、リスク回避志向=「損をしたくない」気持ち

先週、テレビのニュースや新聞では、6月3日に厚労省が発表した最新の出生率について報じていました(出生率=合計特殊出生率、1人の女性が生涯に産む子供の数)。 日経新聞(6月4日土曜日朝刊)の1面の記事にも、このことは出ていました。2021年の日本の出生…

「国の病気」を治したい・後藤新平のこと

日本で、政府による福祉や公衆衛生などへの取り組みが本格的に始まったのは、明治の後半から大正にかけてのことでした。たとえば病院の整備、下水処理、貧しい人への支援、公営住宅、託児所等々の事業です。 「国鉄」のもとになる組織ができたのも、その頃で…

現代におけるコミュニティの衰退・パットナム『孤独なボウリング』を今あらためて読む

よく言われることではありますが、現代社会(先進国)で顕著な変化のひとつに「コミュニティの衰退と個人主義化」があるでしょう。人びとが従来的なコミュニティのつながりを失って、ばらばらの個人になっていく――これは私たちの多くが感じているはずです。 …

「誤送金」の事件で社会について学ぶ

最近、テレビのワイドショーをみると阿武町の誤送金事件のことを毎日のようにやっています。ネットでもいろいろ取り上げられている。 私は当初それを多少眺めるくらいで、あまり関心を持っていませんでした。「あいつは悪い奴」「いやこっちが悪い」みたいな…

「文化」を繁栄の基盤にした衰退期のベネチアに学ぼう

今の日本にとって最重要の長期的課題は「これからの繁栄の基盤をどうするか」ということではないでしょうか? この数十年の日本の繁栄の基盤は、「家電や自動車などの工業製品をつくり、輸出すること」でした。 しかし、この基盤は近年かなり揺らいでいます…

戦争という破壊がもたらした平等化

歴史学者のウォルター・シャイデルによる、世界上のさまざまな「破壊がもたらした平等化」を扱った『暴力と不平等の人類史』(東洋経済新報社、2019年、原著2017年、鬼澤忍・塩原通緒訳)という本があります。 その本では、アジア太平洋戦争による「平等化」…

「技術革新がペースダウンしている」という説

美術・音楽・文学などのさまざまな表現で、20世紀末以降「新しいものが生まれにくくなっている」ということは、専門家やマニアのあいだでたまに言われます。私もそのように思っている1人。 ただ、文化的な領域で「何が新しいか」は、感覚的・主観的なところ…

「シン・ウルトラマン」をみた・社会の変化がゆっくりになっている

映画「シン・ウルトラマン」をみてきました。いろんな評価があるようですが、私は楽しい時間を過ごすことができました。50代後半の、初代ウルトラマンに夢中になった世代だからでしょう。 あの映画は、そういう世代のための「ウルトラマン祭り」です。「世界…

「理想の村」のむずかしさ

5月14日は、共産主義の運動家ロバート・オウエン(1771~1858、イギリス)の生まれた日。 オウエンは、裸一貫から身をおこし、紡績工場の経営者として事業を成功させました。そしてそれだけでなく、労働者の待遇改善や教育・啓蒙にも熱心に取り組みました。 …

「大統領」と「首相」からみた、さまざまな政治体制

先日、韓国の新しい大統領が就任しましたが、そもそも「大統領」とは何でしょうか? 「首相」とどうちがうのでしょうか? 大統領は「共和国の元首」です。共和国とは「国王などの世襲の支配者がいない国」のこと。元首とは「国を代表するトップ」です。 一方…

汚職とロボット官僚

権力者の汚職には、家族や親しい人のためのものが多いです。 たとえば何年か前には、当時の我が国の首相が友人の学校法人のため、あるいは隣国の大統領が姉妹同然の親友のため、不正を行ったのではという疑惑が持ち上がりました。そして、この大統領は退任後…

子どもに関する統計・とくに乳児死亡率に注目

今日(2022年5月5日)の日経新聞に、子どもの日にちなんで「日本の子どもが減っている」という、恒例行事的な記事がのっていました。そこにつぎのデータがありました。 総務省の推計によれば、日本の15歳未満の子どもは2022年4月1日時点で1465万人。去年より…

楽天主義のワイマール憲法と、人間不信のボン基本法

第二次世界大戦をひき起こした独裁者ヒトラー(1889~1945)は「ワイマール憲法」のもとで登場しました。 この憲法は民主的で、国民投票や大統領公選のように「国民が直接決める」ことを重視しました。なのに、独裁者を生んだのはなぜ? そこで、戦後のドイ…

県庁所在地と2番手の都市の格差拡大

先日、秋田県能代市を歩く機会がありました。能代は妻の郷里の近くで、県北部の中心都市です。 能代市は長いあいだ県内で県庁所在地・秋田市に次ぐ「2番手」の規模の都市でした。木材関連などの産業が栄え、能代港は、古くから県北部の木材・鉱物・コメなど…

「どれにも一理ある」という見方の効用

日本の安全保障の法制・方針については、絶えず議論の対立があります。最近の国際情勢(ウクライナ・中国・北朝鮮などのこと)も、安全保障に関する関心を高めている。 「今の日本の周囲にはさまざまな脅威や不安定要素がある。防衛力の強化が急務だ。防衛予…

戦争を回避するために必要なこと・オルテガ・イ・ガセットの「平和主義について」

オルテガ・イ・ガセット(1883~1955)は、大衆社会批判の古典である『大衆の反逆』(1930年)を書いたスペインの思想家です。 彼はそのほかにもいろんなテーマを論じていて、そのひとつに「平和主義について」という、1937年に書かれた文章があります。 193…

戦争を終わらせる難しさ・千々和泰明『戦争はいかに終結したか』

昨年(2021年)に出版された、千々和泰明『戦争はいかに終結したか』(中公新書)という本があります。世界大戦、ベトナム戦争、湾岸戦争などの1900年代以降のいくつかの大きな戦争の終結過程を述べた本です。 「戦争終結」というテーマは、たしかに重要です…

安く本が買える時代が終わる?

日経新聞(2022年4月2日朝刊)で知ったのですが、文庫本の新刊の平均価格は2021年に税抜きで732円となり、2001年の587円から約25%上がったのだそうです。税込みだと805円。 記事にもあるように、たしかに1000円を超える文庫本も最近は目につきます。 記事に…

戦争は何故なくならないのか

誰もが「平和は大切」というけど、戦争はなくなっていません。それは、さまざまな「正義」と戦争が結びついているからです。 たとえば「貧困や格差をなくす」といった、「平和」と同じくらい強力な正義があります。 革命は一般に内戦を伴います。革命とは、…