そういちコラム

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ウクライナの壮絶な歴史

今日は、私の世界史専門ブログ「そういち総研」に、ウクライナの歴史を簡略にまとめた記事をアップしました。

ウクライナという国は、大国が奪い合う「狭間の国」として、壮絶な歴史を歩んできました。それを「ウクライナという地域の支配がどのように移り変わっていったか」を述べてお伝えしようとする記事です。

最初はこの「そういちコラム」のために書き始めたのですが、5000文字近くになったので、世界史専門の、長文の記事を載せている「そういち総研」でアップすることにしました。

こちらのブログでは、ウクライナの歴史を、さらに簡略な3分で読める記事にまとめました。

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800年代に成立したキエフ・ルーシという国が、今のウクライナの原型です。11~12世紀には当時のヨーロッパの大国にまで発展しました。ルーシとは、ロシアあるいはスラブ人のこと。

1000年代末のヨーロッパ

しかし、1200年代にモンゴル帝国の侵入などでキエフ・ルーシの国は崩壊。その後モンゴル帝国の一画を占める王朝の支配とともに、1300年代後半からはポーランドとリトアニアによる支配が続きました。

そして1500年代からは、クリミア半島などの南部はイスラムの大国オスマン帝国の勢力下に。また1600年代後半以降は、ウクライナのその他の地域は、ロマノフ朝のロシアとポーランドによって分割され支配を受けます。

ロマノフ朝のロシアは、もともとはキエフ・ルーシの辺境で生まれたモスクワ大公国が発展したものです。モスクワ大公国は、モンゴルの支配を受けましたが、やがてその支配から脱し、以後ルーシ(スラブ人)の主要勢力となったのです。

そして以上の経緯から、ウクライナ(とくに西部)はポーランドという西欧に近い国との関係が深く、それがルーツは同じであるロシアとのちがいを生むひとつの要因になっています。

1700年代末には、ポーランドがプロイセン(ドイツの主要勢力)、ロシア、オーストリアによって分割されました。その一方(ポーランド分割にやや先立って)、ロシアはオスマン帝国からクリミア半島の地域を奪っています。こうした結果、ウクライナの大部分をロシアが支配するようになりました。

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その後、第一次世界大戦(1914~18)のなかでロシア革命(1917)が起きて、ロマノフ朝は滅亡。

革命やその後の動向によってウクライナには権力の空白が生じ、つかの間のウクライナ独立ということもありました。

しかし紆余曲折を経て、結局はレーニンが率いるロシアのソヴィエト政府の支配を受けることになります。1922年に成立したソヴィエト社会主義共和国連邦(ソ連)のなかに、ウクライナは組み込まれたのです。

その後のウクライナは、レーニンのあとソ連の独裁者となったスターリンによって過酷な支配を受けました。1930年代のウクライナでは、集団農場化の失敗や不作、ロシアのソヴィエト政府の過酷な食糧の取り立てで100万人単位の餓死者が出ています。

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そして第二次世界大戦(1939~45)の時代。1941年にナチス・ドイツが大軍でソ連に侵攻を開始。ウクライナはナチスに占領されてしまいます。そして一層過酷な支配を受けました。

その後、ソ連が反撃してウクライナを取り戻し、ナチス・ドイツは敗北して終戦。再びウクライナはロシアのソヴィエト政府の支配下に。その支配はソ連崩壊まで続きました。

第二次大戦中のヨーロッパ 網掛けは枢軸国(ドイツなど)、ドット模様は枢軸国の最大の占領地


そして1991年のソ連崩壊に伴って、ついにウクライナは独立を果たしたのです。

しかし現代において、プーチン政権のロシアがまたウクライナを支配しようと動きだしたわけです。2014年にはクリミアがロシアに併合され、東部ドンバス地方を分離させ支配下に置こうとするロシアとの戦い始まり、2022年にはロシアによる侵攻で大規模な戦争が始まった……

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こうやって、ざっと見渡しただけでも、ほんとうに壮絶な歴史です。

中世に自分たちの国家が崩壊して以来、何度も何度も支配者が変わり、過酷な支配も受けてきた。最近になってようやく独立したのに、また侵略を受けている。それでも、民族としてのアイデンティティや文化は守り続けたのです。

これにくらべて私たち日本の歴史のなんと幸せなことか。

だから私たちは、恵まれた条件を大切に、繁栄や平和を守っていかないといけないのでしょう。そして、ウクライナのような国の歴史についても意識的に学ぶ必要があるはずです。そうでないと、世界で起きていることがよくわからなくなってしまうと思います。

私そういちの世界史ブログ「そういち総研」の記事

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