そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

発想法

カルトの「説明力」という魅力にご用心

オウムによる地下鉄サリン事件から30年。 私は当時若いサラリーマンで、仕事の傍ら哲学や歴史の本を読むのが、大事な生きがいや逃げ場でした。一応は会社生活になじんでいましたが、違和感もかなり感じていました(のちに40代の時、私は起業するために会社を…

デマに騙されないための大事な考え方

デマに騙されないための考え方について、科学史家・教育学者の板倉聖宣(1930~2018)は、1964年に高校生向けの雑誌に掲載された文章で、こんなことを述べています。 “相手のデマや宣伝にひっかからないためには,相手の言い分にのって,こまごました議論や…

コレクションされるモノの価値

大谷翔平選手が「50-50」を達成したときのホームランボールが、日本円で6億6千万円で落札……こういうニュースを見聞きすると、「コレクションされるモノの価値」というのは、そのモノ自体よりも、その背景にある「物語」「コンセプト」のような付加的な情報…

定員のある夢・オリンピックをみながら

「夢をかなえる」というときの「夢」は、「その夢にどの程度のきびしい定員があるか」という視点で分類・整理ができると思います。 つまり、「その夢・目標をかなえられる人数がどれだけ限定されているか」ということは、「夢」というものを考えるうえで大事…

生成型AIは「人間の精神」と「外界」のつながりを歪めるかもしれない

ChatGPTに代表される生成型AIというのは、情報の検索や整理、アイデアの検討などに役立つ道具です。そういうものとして使いこなせる人は、ぜひ使えばいいと思います。 その一方でChatGPTは「人間の精神・認識」と「外界」の関係をかく乱したり、歪めたりする…

素人が「科学とは何か」を考えるための本・『サイエンス・ファクト』

ガレス・レン&ロードリ・レン『サイエンス・ファクト 科学的根拠が信頼できない訳』(塚本浩司監訳・多田桃子訳、ニュートン新書、2023年)という本を読みました。イギリスの生理学者である父と、科学社会学的な分野の研究者である息子による共著。 サイエ…

ボーア研究所のコペンハーゲン精神(わけへだてのない協力・自由な討議・ゆとりとユーモア)

「量子力学」の建設者、ニールス・ボーア(1885~1962、デンマーク)は、アインシュタインと並んで、20世紀を代表する物理学者だといわれます。 でも「量子力学とは何か」をきちんと説明する能力が私にはありません。とりあえず「現代物理学の重要な領域で、…

自分の町を出たことがなくても、世界を語ったカント

「ドイツ観念論」の大哲学者イマニュエル・カント(1724~1804)は、大学で哲学のほかに地理学の講義も行いました。その講義は大好評で、多くの学生や市民が聴講しました。彼は世界の町や自然を、目に浮かぶように生き生きと語りました。 しかしカントは、生…

今日の名言 チャールズ・イームズ 革新は最終手段

【今日の名言】チャールズ・イームズ(米国のデザイナー、1907~1978) 革新は最終手段。 (イームズ・デミトリオス『イームズ入門』日本教文社より) チャールズ・イームズはイスや家具のデザイン、建築、実験的な映像作品、グラフィック、写真などで知られ…

現象に名前を付ける・ベテラン歌手のクセの強い歌い方は「シクラメン現象」

「シクラメン現象」というのは私の造語で、「ベテランの歌手・アーティストに時々みられる、技巧的でクセの強い歌い方」のことです。 この言葉は、布施明さんが「シクラメンのかほり」(1970年代のヒット曲)を歌うのを、ふた昔前にテレビでみていたときに思…

頭を悪くする確実な方法

頭をよくする特効薬などありません。でも、悪くする確実な方法ならあります。それは、興味が持てないことをがまんして勉強することです。 これは、効きます。脳細胞を傷つけます。がまんして勉強することで、学ぶことがきらいになります。「何かに興味を持つ…

頭が良くなるコトバ・抽象と具体

この世界には、それを知ると「頭が良くなるコトバ」というものがあると思います。その言葉を通じて、ものごとをより深く・的確に考えることができるようになるのです。 その言葉の代表格に「抽象」があります。それと対をなすのが「具体」です。 まず例をあ…

まず、「いいな」と思う人を応援しよう

会議や打ち合わせで、「なるほど」と思えるいい話をする人がいたとします。そうした場では、「それいいね」ということを、はっきり表現することです。できればその場で、気が小さくてそれができないなら、あとで個人的に。 いい話をする人は、その場の「主役…

1人でないと考えられない。1人では考えられない。

「1人でないと考えられない。1人では考えられない」というのは、自分でつくった格言みたいなもの。座右の銘のようにときどき思い出します。 深く考えることや、核となる大事なアウトプットというのは、1人で行うものです。「みんなで・仲間で」という姿勢だ…

「どれにも一理ある」という見方の効用

日本の安全保障の法制・方針については、絶えず議論の対立があります。最近の国際情勢(ウクライナ・中国・北朝鮮などのこと)も、安全保障に関する関心を高めている。 「今の日本の周囲にはさまざまな脅威や不安定要素がある。防衛力の強化が急務だ。防衛予…

自然科学は避けて通れない

「イギリス経験論」の大哲学者ジョン・ロック(1632~1704)は、大学で医学や自然科学を学びました。 「ドイツ観念論」の巨匠、カント(1724~1804)やヘーゲル(1770~1831)の学位論文は、天文学にかんするものでした。カントは、太陽系の起源を論じる「星…

新しく何かを始めるために大事なこと・じつは「過去の仕事の再検討」

新鮮な気持ちで新しく何かを始めたいという方に、ぜひおすすめしたいのが「過去の仕事の再検討」です。 まったく新しい何かに取り組むのもいいのですが、じつは「以前に取り組んで未完成や不発におわった仕事を再検討する」のは、自分を発展させるうえで大事…

計量カップの考案者・香川綾という昭和の巨人

あなたは、台所で使う「計量カップ」や「計量スプーン」(大さじ・小さじ)を生み出したのが、日本人であることを知っていますか? それらは、医師で栄養学者の香川綾(かがわあや、1899~1997)が、1948年頃に考案したものです。3月28日は彼女の誕生日です…

「他人への批判」から抜け出す

二十代半ばの頃の私は、読んだ本についての批判をノートによく書いていました。「あの本のここがダメ、なぜなら…」といったもの。この頃、多少勉強して力がついた感じがしたので、その「実力」を使ってみたくなったのです。 自分が信奉する立場とは異なる考…

今日の名言 黒澤明 脚本は映画の苗

【今日の名言】黒澤明(映画監督、1910~1998) 3月23日は黒澤明監督の誕生日。彼はこんなことを言っています。 脚本は、映画の苗だ。 つまり「映画にとって、脚本はすべての基礎となる設計図」ということです。 脚本がダメだと、演出や役者の演技や、そのほ…

体系だった世界観・なぜカルトにひきつけられる?

昨日(3月20日)は1995年に地下鉄サリン事件が起こった日で、新聞・テレビなどで、当時をふりかえる報道がありました。オウム真理教というカルト教団が、都内の地下鉄に猛毒のサリンをまいたテロ事件。あれから27年も経つのですね。 当時の私(読書が生きが…

今日の名言 カエサル 見たいものしか見ない

【今日の名言】カエサル(ローマ帝国の基礎をつくった、事実上の初代ローマ皇帝、紀元前100~前44) 人は見たいものしか見ない。 これは、2000年余り前に数々の戦争や政治的な闘争を勝ち抜いた、ユリウス・カエサルの言葉を元にしています。 私たちがこの言…

「計画された偶然」と鍛錬

よく「明確なキャリア(職業)のプランを持とう」と言います。しかし、現実はなかなかプラン通りにはいかないもの。プランにこだわるより、現実に起きたことに柔軟に対応して自分を発展させるほうが重要です。 そこで、普段から準備や働きかけをして、より良…

今日の名言 どちらに転んでも

【今日の名言】板倉聖宣(教育学者・科学史家、1930~2018 )『発想法かるた』仮説社より どちらに転んでもシメタ。 板倉は私が影響を受けた先生です。不安な事態に直面したり、悲観的な気持ちがわいてきたとき、私は念仏のようにこの言葉を思い出します(こ…

蘭学(異端の新しい世界)をみつけて創造的に生きる

「創造的に生きるには、自分なりの“蘭学”をみつけることだ」と私は思います。ここでいう蘭学とは「評価が定まっていない、異端の新しい世界」のこと。 江戸時代の日本は、オランダ以外の西洋には国を閉ざしていました。しかし一部の先覚者は西洋文明の優秀さ…

「ニセの人望」ではなく、自分に合う人望を求める

福沢諭吉の『学問のすゝめ』に、こんな意味の一節があります。 「人望はその人の備えている能力や人徳によるものだが、そうでないことも多い。それは、見かけだおしの宣伝だけで売れているインチキ商品みたいなものだ」 つまり、実際の能力などに基づかない…

英訳して日本語に戻す・シンプルに書く方法

村上春樹さんは30歳頃に初めて書いた小説「風の歌を聴け」でデビューしました。この作品はいったん書きあげた原稿を、全部書き直して完成させたものです。 最初は一般的な小説の文体で書いたのですが、どうも納得できない。そこで最初の1章くらいを英訳して…

今日の名言 ガリレオ 自分で確かめよう

【今日の名言】ガリレオ・ガリレイ(近代科学の父、1564~1642) どうして人の報告を信じるばかりで、自分の眼で観察したり見たりしなかったのですか。(ガリレオ『天文対話』より) 2月15日はガリレオ・ガリレイの誕生日。ガリレオは、真理を実験的に確かめ…

今日の名言 その問題を解きたいか? 問題発見の人間学

【今日の名言】ゴース、ワインバーグ著『ライト、ついてますか 問題発見の人間学』より 私は(われわれは)その問題を本当に解きたいか? ゴースとワインバーグは技術的問題に詳しいコンサルタント。問題に対処するとき、この言葉で自問してみては? 私たち…

猿を背負って戦う選手たち・オリンピックという場所

錦織圭選手は、こう述べているそうです。 《小さい頃に“背中に猿を背負うな”と言われました。よけいな思いや、プレッシャーを背負いすぎるなと。》(「錦織圭公式サイト」より) なるほど「猿を背負う」か。たしかに「動きを制約する猿」には気をつけないと…