よく「明確なキャリア(職業)のプランを持とう」と言います。しかし、現実はなかなかプラン通りにはいかないもの。プランにこだわるより、現実に起きたことに柔軟に対応して自分を発展させるほうが重要です。
そこで、普段から準備や働きかけをして、より良い「偶然」をつくり出していく。キャリアの理論でこれを「計画された偶然(プランドハプンスタンス)」といいます。
これはクランボルツという学者が言っていること。大事なことをうまくあらわしている、いい言葉だと思います。
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この言葉を、今日のNHKの朝ドラ「カムカムエヴリバディ」をみて思い出しました。
時代は90年代初頭。川栄李奈さん演じる主人公は、時代劇撮影の映画村に勤務。そこに大部屋俳優で斬られ役を40年以上続けるおじさん(松重豊さんが演じる)がいた。
この人はいつも着流し姿で、侍のような言葉で話す。20数年前に映画で抜擢され、重要な役で見事な立ち回りを演じたことも。しかし映画はコケてしまい、その後は役に恵まれない。それでも毎日、撮影所の稽古場で黙々と殺陣(たて)の稽古に励んでいる。
そのおじさんが、主人公やその彼氏(若い大部屋役者)に言うのです。
「日々鍛錬し、いつ来るともわからぬ機会に備えよ」
「機会に備えて鍛錬する」のは、「計画された偶然」のための活動の一種です。それだけでなく、周囲や社会への働きかけなども「偶然」を生むのに有効なのでしょう。でも、日々の鍛錬が大事なことはまちがいない。
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それで自分のことも思いました。私は10年近く前に、今の「はてなブログ」とはちがうところでブログを始め、ライフワークである世界史のことなどを書いていました。
あまりアクセスのないブログでしたが、本気で書いていました。でも記事が何百かになってもアクセスは増えない。
ところが、ある日私のブログをみた出版社の方からメールがあって、お会いすることに。そして世界史の入門書を出版することが実現したのです(『一気にわかる世界史』日本実業出版社)。鍛錬していてよかった。
ただし、残念ながら私の本はベストセラーには程遠いです。それでも、読者からはありがたいことに高評価をいただいています。
たとえば現在のアマゾンのレビューは13件で平均4.6(2023年3月現在はレビュー20件で平均4.6)。レビューのなかには「どうしてこんなに知名度が低いのか不思議」などとおっしゃる方も。
私も松重豊さんが演じる男のように、この本以降何年も機会には恵まれていません。でも、機会に備えて書くことを続けています。
いい中年男が残念な感じかもしれません。だが、拙者はこれからも鍛錬し続ける所存。ただし黙々と稽古するだけでなく、働きかけや売込みも、もう少し必要か?
私の本。初心者が世界史の大きな流れをつかむための本です。