そういちコラム

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「大国・先進国ばかり」ではないのが、サッカーのワールドカップ

オリンピックと比較したときのサッカーのワールドカップ(以下単にワールドカップ)の特徴として、「大国・先進国ばかりが強いわけではない」ということがあると思います。

いわば「サッカーにおける平等」が、限界はあるものの、かなり成立しています。

たしかにヨーロッパの先進国や、ブラジルのような南米の大国が強いということはあります。

しかし、ヨーロッパのなかでも中小国に有力な国があったり、アフリカやアジアの新興国・発展途上国が強国に一矢報いる、といったことが起きたりする。

そして、世界のなかで突出した超大国であるアメリカ合衆国が、サッカーの世界では、まったくそうではない。経済大国(GDP世界3位)の日本も、サッカーにおいては新興国にすぎない。今やアメリカに次ぐ超大国である中国は、ワールドカップのこの大会に出場さえしていないのです。

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昨年(2021年)のオリンピック東京大会における、国別の金メダル獲得数の上位10か国はつぎのとおりです。

1位 アメリカ合衆国 39個
2位 中国 38個
3位 日本 27個
4位 イギリス 22個
5位 ROC(ロシア)20個
6位 オーストラリア 17個
7位~10位 10個
オランダ、フランス、ドイツ、イタリア

このように、先進国でかつ人口数千万(5000~6000万)以上の大国が多くを占めます。あとは、先進国とはいえなくても億単位の人口で、経済あるいは軍事でとくに力を持つ中国やロシアといった国ぐに。それから、中規模の先進国であるオーストラリアとオランダ。

つまり、オリンピックはみごとなほどに「大国・先進国が有利」ということ。

上のランキングで金メダル上位3か国(アメリカ、中国、日本)は、世界のGDP(国の経済規模を示す指標)の世界の上位3か国の順位とまったく同じです。

オリンピックは多くの種目からなる、スポーツ全般の祭典ですから、総合的に良い成績をあげるには、まさに国全体の総合力が求められます。

だから大国・先進国が有利になるのも仕方ありません。それはそれで「国家の総力戦(平和の祭典としての)」をみる楽しみがあるわけですが、「大国・先進国以外」の国の人たちにとってはあまり面白くないかもしれません。

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サッカーのワールドカップは、オリンピックのこうしたあり方とはちがいます。サッカーという単一の競技での、いわば「一点突破」の力を競う大会だからです。

今日(11月27日)、日本が対戦するコスタリカも、そういう「一点突破」的な国だといえるでしょう。

コスタリカは中米にある人口510万(2020年、以下数字は全て2020年)の国で、1人あたりGDPは1.2万ドルです。

1人あたりGDPとは、国の経済規模を示すGDP(国内総生産)を人口で割ったもので、その国の経済発展の度合いと深く関わっています。

単純化していえば「1人あたりGDPが高い数値であるほど、経済発展がすすんでいる」ということです。もっと単純化すれば「1人あたりGDPが高い=お金持ち」「低い=お金が無い」ということ。

これに対し、日本の人口は1.26憶、1人あたりGDPは4.0万ドル。人口でみた国の規模も、経済発展の度合いも、日本がはるかに上回っています。

でも、近頃テレビなどで紹介されるところでは、コスタリカでは「スポーツといえばサッカーしかない」といえるほど、サッカーに対し一点突破的に取り組んできたのだそうです。

そしてこの大会で、コスタリカは手ごわい敵として、日本に立ちはだかっている。

でも、人口や経済のような、国としての基本データでみれば、日本からみればごく小さな国です。だがしかし、我が国のチームは十分戦えるはずではありますが、コスタリカに負けてしまうかもしれない(あと1時間ほどで試合開始。どうなるでしょうか)。

日本とコスタリカの試合は、最初に述べた「サッカーにおける平等」ということが、典型的に体現されています。

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以下、ワールドカップ出場国のFIFAランキング(今大会前の最新)、1人あたりGDP、人口(どちらも2020年)の一覧です。ご参考までに。

人口はともかく、1人あたりGDPは、こういう一覧ではほとんど取り上げられません。なお、イングランドとウェールズは例外的に「主権国家」単位の出場ではないので、英国全体のデータです。

ワールドカップの試合をみるとき、「この国は、1人あたりGDPはこれくらいで(これくらいの経済発展度で)、このくらいの人口規模なんだ」というのを確認しておくと、人によっては興味深いはずです(「どうでもいい」という方も多いでしょうが)。

とにかく私自身が「ぜひ確認したい」と思うので、一覧表をつくった次第です。

【グループA】
開催国カタール FIFAランキング50位
1人あたりGDP5.1万ドル 人口290万人

エクアドル 44位 5600ドル 1800万人
セネガル 18位 1500ドル 1700万人
オランダ 8位 5.3万ドル 1700万人

【グループB】
イングランド 5位*英国4.1万ドル 6800万人
イラン 20位 1.1万ドル 8400万人
アメリカ合衆国 16位 6.3万ドル 3.3憶人
ウェールズ 19位*英国4.1万ドル 6800万人

【グループC】
アルゼンチン 3位 8500ドル 4500万人
サウジアラビア 51位 2.0万ドル 3500万人
メキシコ 13位 8300ドル 1.29憶人
ポーランド 26位 1.6万ドル 3800万人

【グループD】
フランス 4位 3.9万ドル 6500万人
オーストラリア 38位 5.6万ドル 2600万人
デンマーク 10位 6.1万ドル 580万人
チュニジア 30位 3300ドル 1200万人

【グループE】
スペイン 7位 2.7万ドル 4700万人
コスタリカ 31位 1.2万ドル 510万人
ドイツ 11位 4.6万ドル 8400万人
日本 24位 4.0万ドル 1.25憶人

【グループF】
ベルギー 2位 4.5万ドル 1200万人
カナダ 41位 4.4万ドル 3800万人
モロッコ 22位 3100ドル 3700万人
クロアチア 12位 1.4万ドル 410万人

【グループG】
ブラジル 1位 6800ドル 2.1憶人
セルビア 21位 7700ドル 690万人
スイス 15位 8.7万ドル 870万人
カメルーン 43位 1500ドル 2700万人

【グループH】
ポルトガル 9位 2.2万ドル 1020万人
ガーナ 61位 2200ドル 3100万人
ウルグアイ 14位 1.5万ドル 350万人
韓国 28位 3.2万ドル 5100万人

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