そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

ヘミングウェイ・氷山の水面下

7月2日は、作家アーネスト・ヘミングウェイ(1899~1961)の亡くなった日です(誕生日は7月21日)。

ヘミングウェイは「省略の文体」といわれる、シンプルで力強い表現で知られます。彼は自分の文章を「水上に現れる氷山の8分の1」に例えました。

書く対象について十分な知識や経験(水面下の8分の7)があれば、多くを省略して書いても、読者には伝わるのだと。

彼は、自分の表現を支える「氷山の水面下」を大きくすることに努めました。

「自分は本は読まない」と言って無知を装うこともありましたが、じつは読書家で、自邸には多くの(9000冊の)本がありました。

一方、旅行や取材、戦地での活動、海外への移住、狩猟や釣り、酒と美食、4回の結婚など、さまざまな経験をしています。実体験と読書の両面から、この世界を理解しようとしたのです。

彼の作品は、その理解で成り立つ「大きな氷山」の一角ということです。

しかし、中高年になると健康が悪化して、経験することも書くことも思うにまかせなくなり、悩んだヘミングウェイは61歳のとき猟銃で自殺しました。

それは残念なことですが、彼が自分の信条に沿って精一杯生きたことはたしかです。

 

「氷山の一角」について、さらに詳しく述べた当ブログの記事

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