そういちコラム

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最後の「20世紀の巨人」・ポール・マッカートニー

今日(2022年6月18日)、ポール・マッカートニー(1942~)が80歳の誕生日を迎えました。

特別なファンというわけではありませんが、ポール・マッカートニーという人は、最後の「20世紀の巨人」だと私は思います。あるいは「現存する世界最大の文化人」といってもいいかと。

「20世紀の巨人」とは、世界史レベルの大きな存在であるということ。「善悪」は問わない。世界に大きな足跡・影響を残した人。そのなかでもとくに有名で「別格」といえる人たち。

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たとえばレーニン、ヒトラー、チャーチル、フランクリン・ルーズベルト、毛沢東、ガンジー、スターリンといった、おもに20世紀前半の世界大戦の時代の指導者。

大戦後だと、ホー・チ・ミン、カストロのような欧米と対立した重要人物もいれば、欧米で現代政治の起点となったサッチャーやレーガンのような政治家もいる。

科学や技術の世界なら、ライト兄弟、アインシュタイン、経済学者のケインズなどが、私はまず浮かんできます。

自動車産業のヘンリー・フォードや、スティーブ・ジョブズのような起業家も重要。

文化・芸術なら、たとえばピカソ、ココ・シャネル、ディズニー、チャップリン、建築家のル・コルビュジエなどが浮かびます。

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ビートルズの中核であるジョン・レノン(1940~80)とポール・マッカートニー(1942~)も、このような「20世紀の巨人」に数えられるはずです。

彼らはたんに「偉大なロックミュージシャン」「音楽を変革した」というだけではない。第二次世界大戦後に生まれた、現代の原点といえる文化全般(若者文化・ポップカルチャーなど)を代表する存在です。

それでは言い尽くせないけど、とりあえず教科書的にまとめれば、そんなところでしょう。ビートルズの彼らは、ふつうに何となく考えられているよりも偉大だったのではないか。

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「20世紀の巨人」のなかで、1940年代前半生まれのジョンやポールは、最も若い世代に属します。

ここで名前をあげた「巨人」の多くは、2人よりもずっと年長です。20世紀前半か1950~60年代までにおもに活躍した人が多いですが、たとえば第二次世界大戦の頃の指導者はみな19世紀の生まれです。

これらの人たちは、とうの昔に死んでしまった。

ビートルズの活動は1960年代(62年レコードデビュー、70年解散)のことですが、ロックミュージシャンというジャンルの特性として、20代の若いときに大物になりました。だから、2020年代現在でもまだ平均寿命くらいの年齢です。

しかしジョンは、40年以上前に撃たれて亡くなってしまった。

なお、ビートルズよりも若く「21世紀の巨人」ともいえるスティーブ・ジョブズ(1955~2011)も、本来まだ元気なはずなのに、病気で亡くなりました。ビートルズ以後の音楽界の巨人・マイケル・ジャクソン(1958~2009)も亡くなった。

しかし、ポール・マッカートニーは今も健在で、80歳の誕生日を迎えることができた。まさに、最後の「20世紀の巨人」なのです。

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以上のことを、ビートルズ(とくにポール)のマニアといえる友人に話したことがあります。

その人はこう言いました――「そういちさんの言うのは一理あるかもしれないけど、ポール本人は自分を“20世紀の巨人”だなんて全然思っていないだろうね

なるほど。ご本人も自分の偉大さがよくわかっていないのかも。とにかく、お誕生日おめでとうございます。ご長寿を祈っております。

 

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