そういちコラム

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ロシアの基本データ・日本人にはわかりにくい国

ロシアという国の基本データをみると、たしかに日本とはいろいろな面で大きくちがっています。手元にある統計集『世界国勢図会』(矢野恒太記念会)でみてみると…

まず人口。ロシア1.5憶、日本1.3憶(2020年)。人口は近いですが、ロシアの面積は日本の45倍。

経済規模を示すGDP(2019年)は、ロシアは日本の3分の1、アメリカの8%。経済大国とはいえない。そしてその経済の中心は、エネルギー資源です。石油などのエネルギー輸出額で、ロシアは世界第1位(2018年)。

輸出の内訳をみても、ロシアは原油と石油製品だけで輸出額の45%を占めます。機械類などの工業製品は4~5%。一方日本の輸出は、ほとんどが機械・自動車をはじめとする工業製品です(2019年)。

ただし、ロシアに相当な科学技術があることは、宇宙開発や軍事をみれば明らかです。しかし社会主義体制をやめて30年以上経つのに、輸出力のある工業は未発達。「技術と工業」という、日本人にはあたり前の組み合わせが、ロシアでは成立していない。

その一方、軍事には力を入れている。ロシアの軍事費がGDPに占める割合は3.0%。日本は1%余り。ほかの大国をみると、アメリカ3.6%、イギリス2.3%、フランス2.2%、中国1.3%(2020年)。

アメリカのほうが対GDP比は高いですが、大国のなかではそれに次ぐ水準です。

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ロシアの政権が軍事にこだわるのは、旧ソ連からのことです。第二次世界大戦のとき、旧ソ連では世界の国々のなかで最も多い、2000万人を超える犠牲者を出しました。ソ連に攻めてきたナチス・ドイツとの戦いによるものです。なお、日本の第二次大戦での犠牲者は、厚労省の統計では、軍人・民間人をあわせて310万人です。

ソ連は建国時(1920年頃)にも、社会主義を敵視する西欧諸国から攻撃・圧力を受けました。そして、冷戦時代(1950年頃~80年代)の西側との対立がある。

そういう経験から、ロシア人にとって「西側から攻撃される」ことへの恐怖や嫌悪感はきわめて強いのでしょう。

このように、ロシアは日本と大きくちがっていて、日本人にはわかりにくい国です。つまり、ロシア人にみえる世界は、私たちとはかなりちがっているようです。そういう「わかりにくさ」を自覚することが、ロシアを知る第一歩なのでしょう。

ロシア人の「軍事が自分たちの安全やプライドを守る」という感覚は、理性や計算を超えたものかもしれません。だから石油資源で得た金は、産業の発展よりも軍事に投入する。

この感覚は「ドーピングしてでもメダルを取ることは、国威発揚として価値がある」というのと、通じ合っていると思います。ロシアにとって、国力に比して過剰な軍事力は「国力のドーピング」なのです。

ソ連の建国者・レーニン

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