そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

2022-01-01から1年間の記事一覧

今日の名言 現実を正視する勇気 『第一次経済白書』より

【今日の名言】『第一次経済白書』(経済安定本部、1947年発行)より われわれは従来まで、ともすれば、現実を正視する勇気にかけていた。 終戦直後のきびしい経済状況を報告した白書の言葉です。 この白書は「第一次」、つまり最初に発行された経済白書です…

真似しよう、借用しよう。そして、そのことを隠さない

文章を書くなら、いいと思うものはどんどん真似しましょう。感動した言葉は、どんどん借りて使いましょう。どんなに真似したって、借りてきたって、あなたらしい個性は出てくるものです。良しにつけ悪しきにつけ、そうなのです。 そして、いろんな借用の組み…

現象に名前を付ける・ベテラン歌手のクセの強い歌い方は「シクラメン現象」

「シクラメン現象」というのは私の造語で、「ベテランの歌手・アーティストに時々みられる、技巧的でクセの強い歌い方」のことです。 この言葉は、布施明さんが「シクラメンのかほり」(1970年代のヒット曲)を歌うのを、ふた昔前にテレビでみていたときに思…

「長老」が力を持つ日本の政治・独裁も改革も阻む体制

日本の政治では、自民党の派閥トップのような長老政治家の影響力は大きいです。現職の総理大臣でも、有力な長老に配慮しなければならないことが多々あるわけです。 先日亡くなった安倍元総理は、自民党最大派閥のトップであり、現在における代表的な「長老」…

非建設的な、マイナスのエネルギーの恐ろしさ・安倍元首相死去

昨日の安倍元首相が殺害された事件に、たいへん衝撃を受け、ご冥福を祈る気持ちとともに、つよい怒りを覚えました。 事件の背景や犯人の動機などは、まだよくわからないわけですが、とにかく非建設的な、マイナスのエネルギーというものを感じます。こういう…

頭を悪くする確実な方法

頭をよくする特効薬などありません。でも、悪くする確実な方法ならあります。それは、興味が持てないことをがまんして勉強することです。 これは、効きます。脳細胞を傷つけます。がまんして勉強することで、学ぶことがきらいになります。「何かに興味を持つ…

大木毅『独ソ戦』・「絶滅戦争」の恐ろしさを日本人に伝えてくれる本  

先日、大木毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(岩波新書、2019年)を読みました。岩波新書の近年のヒット作。部分的には以前に読んでいたのですが、きちんと通読したのは最近です。 この記事は、「独ソ戦って何?」あるいは「聞いたことはあるが、ほとんど何も知…

「あなたの中に眠っている才能」という言葉にご用心

私たちには特別な才能なんてありません。ふつうの教育を受けただけで、これといったものは何もない。私もそう。この現実は、あまり認めたくないものです。 だからつい、甘い言葉に耳を傾けてしまいます。「あなたの中にすばらしい才能が眠っていて、開花する…

今日の名言 カント あえて賢くあれ(「啓蒙とは何か」より)

【今日の名言】カント(ドイツの大哲学者、1724~1804)「啓蒙とは何か」より 自分の「悟性(知的な能力)」を使用する勇気を持て!あえて賢くあれ! 世の中には「バカになれ」という人もいるけどご用心。そして「賢くあろうとする」のは、じつは勇気もいる…

建国の父がつくった小さな図書館・アメリカ議会図書館の創設

アメリカ独立を指導した「建国の父」の1人で、第3代大統領になったトマス・ジェファーソン(1743~1826)。彼は、独立当初から「連邦議会の議員の活動(調査研究など)をサポートする図書館=議会図書館」の創設に、関心を持っていました。 アメリカ建国の初…

フランツ・カフカ 発表できなくても野心作を書き続ける

7月3日は作家のフランツ・カフカ(1883~1924、チェコ)の誕生日。 カフカは、「変身」などの前衛的な作品で20世紀文学に多大な影響を与えた大作家です。でも彼は、生前はほとんど無名でした。大学時代に小説を書き始めましたが、作家としてすぐには芽が出ま…

なぜ古代ギリシアで民主政が生まれたのか・さまざまな条件が重なった例外

昨日の当ブログの記事は「古代ギリシアのアテネの民主政が、驚くほど高度に発達したものだった」というものでした。 アテネの民主政のことは学校で習うので、私たちは「知っているつもり」になっている。 しかし、多少突っ込んでその制度などを調べると、じ…

古代ギリシア・アテネの民主政・その驚くべき達成について知ろう

紀元前400年代の古代ギリシアでは、何百もの都市国家(ポリス)が並び立ち、当時の世界で最も進んだ経済・文化が栄えていました。 最も有力なポリス・アテネ(人口20~30万人、都市部に限れば10~15万人)では、市民が主役の民主政治(民主政)が行われまし…

10年頑張れば、本の1冊も出せる・「職業無料相談」の本多信一さんのこと

本多信一さん(1941~)という人がいます。1970年代から40年以上、職業・キャリアのことで悩む個人を対象に無料の相談(「職業無料相談」などと本多さんは呼ぶ)を行ってきた人です。ただし、現在は相談の仕事は休業となっているようです。 「無料」の相談で…

民主主義が「現代の奴隷」を生む?

世界史の流れは、かつては広くみられた奴隷的な人びとを、少数の例外にしていきました。とくに現代の先進国ではそうなっている。 しかし現代にも奴隷はいます。例えば借金返済のため、違法な奴隷的労働を強いられる人たち。 そして、奴隷をもっと広く「意志…

アメリカに勝利した男 ホー・チ・ミン・「徹底抗戦」をどう考えるか

先日私は、現代史についての(大人向けの)世界史セミナーで、講師をつとめました。 私の講演のあとフリートークとなり、ウクライナの戦争について、参加者の1人からこんな発言がありました――「ウクライナの徹底抗戦は、多くの犠牲を生むことになる。戦いを…

現代史についての世界史セミナーで講師をつとめました

私はこれまで、世界史についてみなさんにお話をするセミナーの活動を行ってきました。大人向けの世界史の入門書(『一気にわかる世界史』日本実業出版社、2016年)を出版した翌年からのことです。 貸会議室や公民館に集まったお客さんに「世界史5000年を一気…

「タフで強い三蔵法師」のドラマがみたい

先日、だらだらしているときに、本棚から前嶋信次『玄奘三蔵ー史實西遊記ー』(岩波新書、1952)を、ふと取り出して読み返しました。東洋史の大家による、歴史上の人物としての玄奘三蔵(三蔵法師)伝。 今から70年前の新書で、10年以上前に古書店の安売りの…

ウクライナの壮絶な歴史

今日は、私の世界史専門ブログ「そういち総研」に、ウクライナの歴史を簡略にまとめた記事をアップしました。 ウクライナという国は、大国が奪い合う「狭間の国」として、壮絶な歴史を歩んできました。それを「ウクライナという地域の支配がどのように移り変…

個人情報が徹底的に守られる社会・『ゲド戦記』の世界から

「数十万人分の個人情報を記録した、市役所のUSBメモリー紛失」というニュース。これには、その市の住民だけでなく、かなりの人が不安や恐れを感じているようです。 「個人情報は、厳格に管理され、守られるべき」ということが、すっかり社会に浸透している…

初心者のための、リベラルと保守、ポピュリズムの基礎知識

リベラルと保守――両者は政治的な立場の代表的なものです。 リベラル(リベラリズム)とは、個人の自由を重視する立場。人は古い価値観や慣習から解放されるべきである。たとえば妊娠中絶、LGBTは生き方の自由に属することで、皆がしたいようにすべきと考える…

何十回もくり返し読む本が、一生に1冊は欲しい

たいていの本は、拾い読みでいいと思います。私の場合、全部読む本は10冊に1冊です。でも、拾い読みだけで終わってはいけません。一生の間に、それこそ何十回もくり返して読む本に出会うのも大事だと思います。 そうでないと、いくら本を読んでも、頭の中が…

ガリレオが否定しても地球は回っている・真理は「宣言」では決まらない

ガリレオ・ガリレイ(1564~1642)は、聖書の教えに反する「地動説」を主張したとして、ローマ教皇庁の宗教裁判にかけられました。これは、多くの方がご存じと思います。 このときとくに問題とされたのは、宗教裁判の前年(1632年)に出版され、真正面から地…

中古レコードが海外に買い叩かれる?・野村訓市さんのラジオから

日曜の夜は、たいていラジオを聴いています。大河ドラマも好きなのですが、録画でみています。 昨日(2022年6月19日)は20時からJ-WAVEで「TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING」という番組を聴きました。DJの野村訓市さんの語りや選んだ音楽が気に入って、この…

プチ富裕層とのつき合い方・「プチ文化人」というポジション

この社会には「プチ富裕層」という人たちが存在します。一般的な定義はありませんが、ここでは「金融資産が数千万円~数億円」の人たちとします。大金持ちではないが、相当な経済力の人たち。 2019年の野村総研の推計によれば、金融資産5000万円~5億円の世…

最後の「20世紀の巨人」・ポール・マッカートニー

今日(2022年6月18日)、ポール・マッカートニー(1942~)が80歳の誕生日を迎えました。 特別なファンというわけではありませんが、ポール・マッカートニーという人は、最後の「20世紀の巨人」だと私は思います。あるいは「現存する世界最大の文化人」とい…

世界史セミナーの活動再開を考えています

今回は活動報告的な記事です。私は数年前に『“中心”の移り変わりから読む 一気にわかる世界史』(日本実業出版社、2016年)という(大人向けの)世界史の入門書を出版しました。 その後、この本の内容をベースにした世界史のセミナーを何度か行っています。 …

「論文入門」というより「学問全般への入門」・小熊英二『基礎からわかる論文の書き方』

このあいだ小熊英二『基礎からわかる論文の書き方』(講談社現代新書、2022年)を読みました。 本書の話をする前に、著者の小熊英二さん(1962~)について。それが本書を語るうえで大事なのです。ご存じの方も再確認ということで。 *** 小熊さんは著名な…

2300年前の学者が残した「1万ページ」の論文集・アリストテレス全集

今週のお題「本棚の中身」 下の写真は私の本棚にある『アリストテレス全集』(全17巻、岩波書店、1968年~73年)。アリストテレス(前384~前322)は古代ギリシアの大哲学者。おおまかに2300年前の人。 この全集は今から30数年前、若いサラリーマンだった頃…

給料はあなたの市場価値ではなく、権力の力学で決まる・ローゼンフェルド『給料はあなたの価値なのか』

この社会において「給料は何によって決まるか」「この人がなぜこの給料なのか」という問題――これは、人の生き方や価値観と深く関わるところがあります。 そこで感情的な要素も入ってくる。また、その人の立場によって給料についての経験や見聞はちがう。つま…