そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

2022-01-01から1年間の記事一覧

「再構成された、空想の日本」をみるたのしさ・映画「ブレット・トレイン」

先日、ブラッド・ピット主演の映画「ブレット・トレイン」(デヴィッド・リーチ監督)をみました。 伊坂幸太郎の小説(私は未読)を原作とする作品。原作の登場人物はみな日本人だそうですが、この映画ではほとんど欧米人に置き換わっています。 ブラッド・…

「気に入った著者をとことん追いかけて読む」ことの重要性

読書の大事なコツのひとつに、「気に入った著者の本を、とことん追いかけて読む」ことがあります。 これをきちんと行うと、読書を通じて自分の知的な世界を大きく広げることができます。「初心者レベルを超えることができる」いってもいいです。 その第一歩…

勉強というのは、結局は独学しかない

大人になってからの勉強は、結局のところ全部独学です。大人になったら、手とり足とり教えてくれる人は、もういません。書物や専門家といった情報のありかへ、自分で問いかけ働きかけていくしか、方法はありません。 勉強に必要な条件は、自分自身の意欲を別…

かこさとし展・かこさとしという「知の巨人」

先日、Bunkamura ザ・ミュージアムで「かこさとし展」(かこさとし展 子どもたちに伝えたかったこと)をみてきました。 かこさとし(加古里子、1926~2018)は、昭和の高度成長期から平成にかけて活躍した著名な絵本作家。「だるまちゃん」シリーズや『から…

ゴルバチョフ・「“神はいない”と知らしめたローマ教皇」のような奇妙な人物

亡くなったソ連最後の指導者・ゴルバチョフ元大統領(1931~2022)は、どんな人物だったのか? どう評価すればいいのか? 私なりに「たとえ」として思うのは「『“神はいない”と人びとに知らしめたローマ教皇」というイメージです。 もう少しいうと「神をそれ…

日本に影響を受けたフィンランドのイラストレーターHeikalaのこと・「日本に学んだ異文化」に学ぶ

昨晩FMラジオを聴いていたら、日本のシティ・ポップに影響を受けたという、欧米の若手アーティストの新曲が流れてきました。 その曲はすでに有名なアーティストもやっているような「日本の歌謡曲やシティ・ポップを一部取り入れた」というものではありません…

『耳をすませば』における団地の描写・なじんだ風景がちがってみえる

昨日(2022年8月26日)、日テレ系の「金曜ロードショー」で、アニメ映画『耳をすませば』(1995年公開、近藤喜文監督、宮崎駿プロデュース)をやっていました。今回私がみたのは全部ではなく、後半だけ。でももう、3回は通してみている。 『耳をすませば』の…

自分の町を出たことがなくても、世界を語ったカント

「ドイツ観念論」の大哲学者イマニュエル・カント(1724~1804)は、大学で哲学のほかに地理学の講義も行いました。その講義は大好評で、多くの学生や市民が聴講しました。彼は世界の町や自然を、目に浮かぶように生き生きと語りました。 しかしカントは、生…

妻のワークスペース・小さめのデスクを置く

60数平米の古い団地をリノベーションして、夫婦2人で暮らしています。リノベしてから15~16年経ちます(リノベの設計は寺林省二さんによる)。テラバヤシ・セッケイ・ジムショ 2人暮らしですが、我が家にはデスクが3つあります。ひとつは私の書斎デスク。あ…

独特の発達を遂げたヨーロッパのパンの美味しさ・世界のパンの大分類

今朝は、昨日買ってきた、たまに買っている専門店のパンを朝食にしました。 ヨーロッパ風の、歯ごたえのある、パンの風味をかみしめるようなパン。パンを味わうことがメインなので、パンのほかには、野菜スープとチーズを少々、あとはコーヒーだけ。 私は基…

今日の名言 ナポレオン 6万の兵に私が加われば…… ナポレオンの功績は何?

【今月の名言】ナポレオン・ボナパルト(近代フランスの基礎を築いた軍人・政治家、1769~1821) 6万の兵に私が加われば、16万の兵力に相当する。 1814年に、敵であるヨーロッパ諸国の連合軍25万に対し6万の兵力を率いて戦い、勝利したときのナポレオンの言…

今日の日経新聞のあちこちにみられる「衰退する日本」

最近の日経新聞(朝刊)を読んでいると、「この日の新聞は、まるで『衰退する日本』をテーマに特集しているみたいだ」と思えることが、ときどきあります。 もちろん、そんな「特集」を組んでいるわけではありません。 でも、ざっと眺めただけで、「衰退する…

柔軟さと寛容を失った西ローマ帝国の崩壊

ローマ帝国の西半分(西ローマ帝国)は、400年代後半に体制崩壊しました。内乱やゲルマン人の侵入がその原因です。 ゲルマン人とは、ローマ帝国周辺の辺境に住む人びとの総称で、いくつもの部族を含みます。476年にゲルマン人傭兵隊長による反乱で、西ローマ…

今日の名言 アンネ・フランク 戦争の責任は偉い人たちだけにあるのではない

【今日の名言】アンネ・フランク(ナチスの迫害の犠牲になったユダヤ人少女、1929~1945) 戦争の責任は、偉い人たちや政治家、資本家にだけにあるのではありません。名もない一般の人たちにもあるのです。 迫害を逃れて家族や何人かのユダヤ人たちと隠れ家…

小松左京のSF短編「地には平和を」・本土決戦が行われたパラレルワールド

SF作家・小松左京(1931~2011)の最初期の作品に「地には平和を」という中編があります(文庫版で50ページほどの長さで「短編」ともいえる。角川文庫『地には平和を』所収)。 太平洋戦争をテーマにした作品で、1960年(昭和35)に書かれたものです。 こ…

暮らしのファイリング・本棚とクリアファイルによる整理

世の中は夏休みモード。お休みシーズンには、家の中をいろいろ片づけたくなります。 今の私は年中お休みみたいな状態なのですが、世の中のモードには、やはり影響を受けます。このあいだは、ファイルに溜まったさまざまな生活関連の書類・紙片を整理しました…

戦争を始めたときの、日本とアメリカの国力の比較データ

日本がアメリカなどと戦ったアジア太平洋戦争(1941年12月~45年8月、太平洋戦争、大東亜戦争とも)は「超大国アメリカに対する無謀な戦争だった」と言われます。そのことは多くの人が認識しているでしょう。 「無謀」というのは、日本とアメリカの国力の差…

今日の名言 司馬遼太郎の遺産(残した財産の内訳)からみえるもの

司馬遼太郎(1923~1996)は、『坂の上の雲』『竜馬がゆく』など数多くの歴史小説や『街道をゆく』などのエッセイを残し、幅広い読者を得た大作家でした。 8月7日は司馬の誕生日。さっきある方のブログで知りましたが『ドラえもん』ののび太も、同じ日が誕生…

ずっと使っている、スチールパイプの可動式テレビ台

ウチのテレビ台は、スチールパイプなどで出来た可動式のものです。もう30年近く(私が独身の20代の頃から)使っている、おそらく我が家にある最古の家具。 スウェーデンの家具メーカー・イノベーター社の製品で、たぶん基本デザインは70~80年代のものではな…

「私的なテロ」の時代・「テロへの共感」に気をつける

安倍元首相の殺害事件から、もうすぐ4週間が経とうとしています。いろんな事実が明らかになり、人びとや識者のいろんな反応・主張をみていると、いくつか気になること、「それはどうなんだろう」と思えることもある。 ひとつは、「政治的な主張に基づく犯行…

戦前のエリート軍人は貧乏サラリーマンだった?・エリートをどう処遇するか

社会のなかでエリートとされる、高度の学歴や能力、権限を持つ人たちをどう処遇するか――これは重要な・むずかしい問題です。 エリートが極端に優遇される社会では、多数派の人たちの不満や無気力が強くなり、社会の活力と安定は損なわれるはずです。多くの発…

「太陽の塔」という幸せなプロジェクト

先日、NHKの『歴史探偵』という番組で、1970年の大阪万博の「太陽の塔」についてやっていました。戦国時代や幕末などのいかにも「歴史」という感じではないテーマは、この番組ではめずらしい。 太陽の塔については、私も関心があります。この番組の内容と…

大原孫三郎と「大正の社会実験」・知恵とセンスと想いを込めてお金を使う

7月28日は、大正~昭和初期の実業家・大原孫三郎(1880~1943)の誕生日です。 大原は地元の倉敷(岡山県)で、親から受け継いだ会社(倉敷紡績など)を経営しながら、孤児院、社会問題の研究所、総合病院、美術館などの社会事業を手がけました。 大原がおも…

今日の名言 ヘミングウェイ 「氷山の一角」で伝える

【今日の名言】アーネスト・ヘミングウェイ(作家、1899~1961) “作家は自分が書いていることを充分よく知って、わかっていることを省略したとしても、作家が真実を書いているかぎり、読者は作家が実際に書いたと同様に強くそれを感じることができるのだ” …

日本にもっと大規模な、本格的なミュージアムを

今日は夫婦で上野の森へ行ってきました。東京都美術館で開催されている「毎日書道展」をみるためです。書道展として最も代表的なもののひとつ。妻が書道教室を営む書道の先生で、自分やお仲間が毎年出品している。この書道展に行くのは年中行事です。 書道展…

力不足を気にしない・必要レベルの2~3割でも自分の作品をつくり始める

勉強の極意は「作品化」だと、私は思っています。つまり勉強の成果をもとに自分の作品をつくること、そのための取り組みこそが最高の勉強だということです。 「作品」というのは、文章作品のほか、プレゼンやパフォーマンス、ビジュアルの作品、プロダクト製…

真理がたどった物語・メンデルやコペルニクスの史実と『チ。-地球の運動について-』最終巻が描く歴史の真実

本棚から取り出して、昔に買った古い新書を読みました。中沢信午『遺伝学の誕生 メンデルを生んだ知的風土』(中公新書、1985)――「遺伝の法則」を発見したグレゴール・メンデル(1822~1884、オーストリア)の評伝です。今年(2022年)はメンデル生誕200年…

現代世界と似ている? ビザンツ帝国はどんな国だったか

「ビザンツ帝国」という国に関心があります。教科書ではマイナーな扱いですが、じつは世界史を理解するうえで重要な国です。これまでビザンツ研究の大家・井上浩一さんの著作(『ビザンツ 文明の継承と変容』京都大学学術出版会)を中心に、何冊かの本を読ん…

世界史と日本史のかかわり・世界史上で日本に影響をあたえた国は?

この記事では、世界史と日本史のかかわりについて考えます。 世界と日本のつながりをみるときは「世界史上のどの国が、日本にどのような影響を与えたか」という視点がまず重要だと、私は考えます。 どの国もそうですが、日本の社会や文化も、その歴史のなか…

今日の名言 チャールズ・イームズ 革新は最終手段

【今日の名言】チャールズ・イームズ(米国のデザイナー、1907~1978) 革新は最終手段。 (イームズ・デミトリオス『イームズ入門』日本教文社より) チャールズ・イームズはイスや家具のデザイン、建築、実験的な映像作品、グラフィック、写真などで知られ…