そういちコラム

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2300年前の学者が残した「1万ページ」の論文集・アリストテレス全集

今週のお題「本棚の中身」 
下の写真は私の本棚にある『アリストテレス全集』(全17巻、岩波書店、1968年~73年)。アリストテレス(前384~前322)は古代ギリシアの大哲学者。おおまかに2300年前の人。

この全集は今から30数年前、若いサラリーマンだった頃に古書店で買いました。全巻セットで6万円くらい。でも(もちろん)全部読んでいるわけではありません。パラパラめくったり、拾い読みをしただけです。

この本を買った当時、私は月に100時間を超える残業をしていました。

今でいえばブラックな職場ですが、残業代はちゃんと出た。独身の私は自由に使えるお金がそれなりにあって、そのお金を、本を好きなだけ買うことに使っていました(若い頃から本が好きでした。おもに世界史・社会関係の本)。

6万円の全集も、夜勤明けに昼間の古書店街をぶらついたときにみかけて、ぱっと買ったのです。あの頃は、経済的にも心理的にも、そういう無駄づかいができた。ストレス発散で無駄づかいをしていたところもあります。

そして30年以上にわたって、私の本棚に「神棚」的な感じで祀ってあるわけです。

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この『アリストテレス全集』は、1冊平均500ページほど(注釈など本文以外も含む)で、全17巻。合計すると8000~9000ページ。どんぶりで1万ページ。

論理学・倫理学・政治学・経済学・心理学・力学・天文学・気象学・生物学・生理学など、きわめて幅広い分野を扱ったさまざまな論文が収められています。

アリストテレスは、過去数世紀分の古代ギリシアの学問的文献を徹底的に研究したり、500種類もの生物を観察・解剖したり、160ほどのギリシアのポリス(都市国家)の政治体制を調査したりして、これらの論文を書いたのです。当時は紙はなかったので、パピルスの巻物に書いた。

もしも、大きな図書館などで『アリストテレス全集』をみかけたら、立ち止まって背表紙だけでも、ぜひながめてみてください。

こんな全集になるような著作を残した学者が、2300年前―-日本でいえば弥生時代の初め頃にいたのです!

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なお、近年は同じ岩波書店から新しい翻訳による『アリストテレス全集』が刊行されています。私の本棚にあるのは「旧版」ということになります。しかし「新版」のほうはまだ(2022年6月現在)全巻が出揃っていません。

それでも、大きな本屋さんや図書館には「新版」の何巻かはかなりの確率であるはずです。その1冊を手にとってパラパラめくるだけでも「2300年前にこんなものが……」という「驚異」は感じられると思います。

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