そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

「あなたの中に眠っている才能」という言葉にご用心

私たちには特別な才能なんてありません。ふつうの教育を受けただけで、これといったものは何もない。私もそう。この現実は、あまり認めたくないものです。

だからつい、甘い言葉に耳を傾けてしまいます。「あなたの中にすばらしい才能が眠っていて、開花するのを待っている」といった言葉です。でも、本気にしてはいけません。

人間の頭脳を、ダイヤや石油が埋まっている鉱脈にたとえるのを読んだことがあります。しかし、その鉱脈は最初からあったわけではありません。もとになる物質の堆積があって、そこに大きな圧力などが加わって長い年月を経たのちに、ダイヤや石油になるのです。

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「頭に鉱脈が埋まっている」と思えるようなすごい人が、広い世間にはいます。でも、その鉱脈は初めからあったわけではなく、年月をかけてつくったものなのです。最低でも10年くらいの年月をかけた勉強や訓練の結果です。

「年月の積み重ね」を感じさせない人たち――たとえば、若くして創造的な仕事を成し遂げてしまう人もいます。でもそういう人は、じつは子どものころからそのテーマに取り組んでいるものです。

20歳で作家としてデビューする人は、しばしば小学生のときから小説を書いています。

20代で大発見をする科学者は、少年時代から「未知の問題を自分の頭で解いてみる」という訓練を続けてきました。たとえば、数学の問題の解き方を学校で習ったら、それとは別のオリジナルな解法をひとりで考えてみる、といったことをくり返してきたのです。

年は若くても、スタートが早かった彼らはすでに「ベテラン」なのです。

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才能は、「ない」ところに「つくる」ものです。それは長い訓練によってつくっていくのです。

人間は、これまでやってきたことか、その周辺にあることしかできません。勉強してきたこと、経験してきたことしか知らない。

「眠っている才能」などと口にする人を、簡単に信じてはいけない。その人が「眠っている才能を一気に開花させる方法は、ここに書いてある・このセミナーで学べる」などと言っているなら、相手にしてはいけません。

 

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