そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

民主主義が「現代の奴隷」を生む?

世界史の流れは、かつては広くみられた奴隷的な人びとを、少数の例外にしていきました。とくに現代の先進国ではそうなっている。 しかし現代にも奴隷はいます。例えば借金返済のため、違法な奴隷的労働を強いられる人たち。 そして、奴隷をもっと広く「意志…

アメリカに勝利した男 ホー・チ・ミン・「徹底抗戦」をどう考えるか

先日私は、現代史についての(大人向けの)世界史セミナーで、講師をつとめました。 私の講演のあとフリートークとなり、ウクライナの戦争について、参加者の1人からこんな発言がありました――「ウクライナの徹底抗戦は、多くの犠牲を生むことになる。戦いを…

現代史についての世界史セミナーで講師をつとめました

私はこれまで、世界史についてみなさんにお話をするセミナーの活動を行ってきました。大人向けの世界史の入門書(『一気にわかる世界史』日本実業出版社、2016年)を出版した翌年からのことです。 貸会議室や公民館に集まったお客さんに「世界史5000年を一気…

「タフで強い三蔵法師」のドラマがみたい

先日、だらだらしているときに、本棚から前嶋信次『玄奘三蔵ー史實西遊記ー』(岩波新書、1952)を、ふと取り出して読み返しました。東洋史の大家による、歴史上の人物としての玄奘三蔵(三蔵法師)伝。 今から70年前の新書で、10年以上前に古書店の安売りの…

ウクライナの壮絶な歴史

今日は、私の世界史専門ブログ「そういち総研」に、ウクライナの歴史を簡略にまとめた記事をアップしました。 ウクライナという国は、大国が奪い合う「狭間の国」として、壮絶な歴史を歩んできました。それを「ウクライナという地域の支配がどのように移り変…

個人情報が徹底的に守られる社会・『ゲド戦記』の世界から

「数十万人分の個人情報を記録した、市役所のUSBメモリー紛失」というニュース。これには、その市の住民だけでなく、かなりの人が不安や恐れを感じているようです。 「個人情報は、厳格に管理され、守られるべき」ということが、すっかり社会に浸透している…

初心者のための、リベラルと保守、ポピュリズムの基礎知識

リベラルと保守――両者は政治的な立場の代表的なものです。 リベラル(リベラリズム)とは、個人の自由を重視する立場。人は古い価値観や慣習から解放されるべきである。たとえば妊娠中絶、LGBTは生き方の自由に属することで、皆がしたいようにすべきと考える…

何十回もくり返し読む本が、一生に1冊は欲しい

たいていの本は、拾い読みでいいと思います。私の場合、全部読む本は10冊に1冊です。でも、拾い読みだけで終わってはいけません。一生の間に、それこそ何十回もくり返して読む本に出会うのも大事だと思います。 そうでないと、いくら本を読んでも、頭の中が…

ガリレオが否定しても地球は回っている・真理は「宣言」では決まらない

ガリレオ・ガリレイ(1564~1642)は、聖書の教えに反する「地動説」を主張したとして、ローマ教皇庁の宗教裁判にかけられました。これは、多くの方がご存じと思います。 このときとくに問題とされたのは、宗教裁判の前年(1632年)に出版され、真正面から地…

中古レコードが海外に買い叩かれる?・野村訓市さんのラジオから

日曜の夜は、たいていラジオを聴いています。大河ドラマも好きなのですが、録画でみています。 昨日(2022年6月19日)は20時からJ-WAVEで「TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING」という番組を聴きました。DJの野村訓市さんの語りや選んだ音楽が気に入って、この…

プチ富裕層とのつき合い方・「プチ文化人」というポジション

この社会には「プチ富裕層」という人たちが存在します。一般的な定義はありませんが、ここでは「金融資産が数千万円~数億円」の人たちとします。大金持ちではないが、相当な経済力の人たち。 2019年の野村総研の推計によれば、金融資産5000万円~5億円の世…

最後の「20世紀の巨人」・ポール・マッカートニー

今日(2022年6月18日)、ポール・マッカートニー(1942~)が80歳の誕生日を迎えました。 特別なファンというわけではありませんが、ポール・マッカートニーという人は、最後の「20世紀の巨人」だと私は思います。あるいは「現存する世界最大の文化人」とい…

世界史セミナーの活動再開を考えています

今回は活動報告的な記事です。私は数年前に『“中心”の移り変わりから読む 一気にわかる世界史』(日本実業出版社、2016年)という(大人向けの)世界史の入門書を出版しました。 その後、この本の内容をベースにした世界史のセミナーを何度か行っています。 …

「論文入門」というより「学問全般への入門」・小熊英二『基礎からわかる論文の書き方』

このあいだ小熊英二『基礎からわかる論文の書き方』(講談社現代新書、2022年)を読みました。 本書の話をする前に、著者の小熊英二さん(1962~)について。それが本書を語るうえで大事なのです。ご存じの方も再確認ということで。 *** 小熊さんは著名な…

2300年前の学者が残した「1万ページ」の論文集・アリストテレス全集

今週のお題「本棚の中身」 下の写真は私の本棚にある『アリストテレス全集』(全17巻、岩波書店、1968年~73年)。アリストテレス(前384~前322)は古代ギリシアの大哲学者。おおまかに2300年前の人。 この全集は今から30数年前、若いサラリーマンだった頃…

給料はあなたの市場価値ではなく、権力の力学で決まる・ローゼンフェルド『給料はあなたの価値なのか』

この社会において「給料は何によって決まるか」「この人がなぜこの給料なのか」という問題――これは、人の生き方や価値観と深く関わるところがあります。 そこで感情的な要素も入ってくる。また、その人の立場によって給料についての経験や見聞はちがう。つま…

「生命の源は宇宙から?」みたいな言い方は、科学の報道として疑問

「はやぶさ2が小惑星から持ち帰った砂から、アミノ酸のいろんな種類がみつかった」ということについての“「生命の源」は宇宙から?”みたいな言い方の報道。これに対し、私はどうもひっかかります。 アミノ酸はタンパク質の材料で、生命(細胞)はおもにタン…

「料理」ができなくても自炊はできる・「一汁一菜」でやってみる

私は今50代後半ですが、20代前半までに身につけた基本的な能力――読み書きや計算、ワープロやパソコンの操作などをもとに、それを使いまわしてどうにか生きてきました。 社会人になってから、細かいことは別にして、本当に新しい何かを身につけたことは、残念…

日本の少子化と、リスク回避志向=「損をしたくない」気持ち

先週、テレビのニュースや新聞では、6月3日に厚労省が発表した最新の出生率について報じていました(出生率=合計特殊出生率、1人の女性が生涯に産む子供の数)。 日経新聞(6月4日土曜日朝刊)の1面の記事にも、このことは出ていました。2021年の日本の出生…

生命誕生からの生物進化の歴史・3分で読めるようにまとめてみた

まず、前口上を。私は小学生2年のときに、学習マンガなどで「この地球上の生命は単純な微生物から30~40憶年かけて進化・枝分かれしたものだ」ということをはじめて知りました。そうだったんだ! とくに学校の図書館にあった井尻正二作・伊東章夫絵『先祖を…

頭が良くなるコトバ・抽象と具体

この世界には、それを知ると「頭が良くなるコトバ」というものがあると思います。その言葉を通じて、ものごとをより深く・的確に考えることができるようになるのです。 その言葉の代表格に「抽象」があります。それと対をなすのが「具体」です。 まず例をあ…

エントリーシートには「貢献」を具体的に書く・そして「具体的」とはどういうことか

昨日にひき続き、就活のエントリーシートに関する記事です。でも、この記事から読んでいただいて大丈夫です。そして就活とは関係ない方も、「文章術」に関する話として読んでいただけるかと。 私そういちは「世界史研究」「文筆業」の看板を掲げながら、新卒…

エントリーシートは音読して暗記する・エントリーシートは自分のために書く

私そういちは、もともとは会社員でしたが、今は「世界史研究」の看板を掲げ、その方面での商業出版などの実績もあります。そして、じつはそれなりに経験のあるキャリアカウンセラーでもあるのです。 私の専門は、学生さんや卒業後間もない若い方の就活支援で…

まず、「いいな」と思う人を応援しよう

会議や打ち合わせで、「なるほど」と思えるいい話をする人がいたとします。そうした場では、「それいいね」ということを、はっきり表現することです。できればその場で、気が小さくてそれができないなら、あとで個人的に。 いい話をする人は、その場の「主役…

アダム・スミスとケインズの誕生日は同じ・6月5日を「経済学の日」にしては?

『国富論』の著者アダム・スミス(1723~1790)と、「20世紀最大の経済学者」と言われるジョン・メイナード・ケインズ(1883~1946)は、時代は異なりますが、生まれた日は2人とも6月5日です。 2人は経済学の歴史のなかで「2大巨頭」といえる存在(また2人と…

「国の病気」を治したい・後藤新平のこと

日本で、政府による福祉や公衆衛生などへの取り組みが本格的に始まったのは、明治の後半から大正にかけてのことでした。たとえば病院の整備、下水処理、貧しい人への支援、公営住宅、託児所等々の事業です。 「国鉄」のもとになる組織ができたのも、その頃で…

机に向かっていては、本は読めない

「本は書斎や勉強部屋の机に向かって読むもの」と思っていると、読めません。自分を振り返ってみても、机に向かって読んでいる時間というのは、そんなに多くありません。 本が一番読めるのは、書店のそばのコーヒーショップに入って読むときや、帰りの電車の…

現代におけるコミュニティの衰退・パットナム『孤独なボウリング』を今あらためて読む

よく言われることではありますが、現代社会(先進国)で顕著な変化のひとつに「コミュニティの衰退と個人主義化」があるでしょう。人びとが従来的なコミュニティのつながりを失って、ばらばらの個人になっていく――これは私たちの多くが感じているはずです。 …

「本格派の女優」をめざして努力したマリリン・モンロー

6月1日はマリリン・モンロー(1926~1962)の誕生日。おもに1950年代に活躍し、今も語り継がれる映画女優。 その「死の謎」や、いくつものゴシップもありますが、20世紀半ばの時代を象徴するアイドルとして特別な存在です。 彼女(本名はノーマ・ジーン・モ…