そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

「料理」ができなくても自炊はできる・「一汁一菜」でやってみる

私は今50代後半ですが、20代前半までに身につけた基本的な能力――読み書きや計算、ワープロやパソコンの操作などをもとに、それを使いまわしてどうにか生きてきました。

社会人になってから、細かいことは別にして、本当に新しい何かを身につけたことは、残念ながらなかったように思います。

でも、ひとつ例外があります。それは30代以降に「自炊」ができるようになったことです。これは非常によかった。

***

私は夫婦2人暮らしです。30代で結婚して以来、共働きの暮らしのなかで、朝・夕の食事の半分くらいは私がつくってきました。最近の私はおもに家にいるので、私が食事をつくる頻度はさらに高くなっています。

しかし、私がそのように頻繁に食事をつくっていることを母に話しても、「あんたが本当にそんなことするのかねえ」という感じです。

そして母は「小学校の授業参観のとき、先生が子どもたちに”このクラスでご飯を炊いたことのない人は?”と聞いたら、手をあげたのは、あんたともう1人だけだった」みたいな話をくり返します。

そのような子ども時代の印象は、なかなか消えないようです。たしかに私は20代まで、ご飯を自分で炊いたことはなかったです。

私のことを知る人の多くも「そういちさんは、家のことは何もしない人(家では本を読んでばかり)」というイメージを持っているようです。

でもたしかに家事の多くは妻がしてくれていますが、食事の買い物や支度・片付けは、今は私のほうが多く行っているのです。

***

ここまでで言いたいのは、私がもともと「料理など全然できない(できそうもない)」人間だったということです。そして今もそう思われている。

たしかに今だって、たいした料理は何もつくれません。

しかし、食事にかんして自分や妻のめんどうをみることは、あたり前にできるわけです。もちろん栄養やコストのことも考えてつくります。

そんなふうに暮らしの柱となる事柄を、自分なりにどうにかできるのは、きわめて大事なスキルだと思います。健康にとっても家計にとっても、大きなプラスです。私のつくったものを妻が「うまい」と食べてくれるのも、うれしいことです。

***

だから、私のようなオジさんにとくに多いと思いますが、今まで自炊をしてこなかった人は、これからぜひ自炊の力を身につけたらいいと思います。

その場合、心構えとして大事なのは「理想や意識を低くして取り組む」ことです。

これはつまり「立派な料理をつくろうとしない」ということ。もっといえば「料理といえるほどのものでなくてもいい」ということ。

「料理」ができなくても、自炊はできます。

「自炊」とは「外食や市販の弁当・総菜だけに頼らず、自分の食事を用意すること」です。ろくに料理ができなくても、「食事を用意」できればいいのです。

以下、その精神に基づいて自炊初心者向けの、やや具体的な話を。

***

私がこれまでに一番多くつくったものは、具材が多めの味噌汁・スープです。何種類かのありあわせの野菜を切って(やや小さめに切ったほうがいい)、ちょっと煮て、顆粒の「だしの素」を入れて味噌を入れて……みたいなものです。

だしの素や味噌のかわりに、コンソメスープや中華スープの素を入れてもいいわけです。

そして野菜のほかに、豆腐や油揚げ、肉やハム・ソーセージ、サバの缶詰なども入れたりします。

野菜を切るのがめんどうなら、カットされている冷凍野菜もおすすめです。私はブロッコリー、いんげん、ほうれん草、グリンピースの冷凍野菜はよく使います。

これにご飯かパンと、納豆か漬物でもあれば、立派な食事になります。

これは、料理研究家の土井善晴さんが提唱する「一汁一菜」の考え方に通じます(『一汁一菜でよいという提案』新潮文庫 ほか)。

ご飯は自分で炊くのが理想ですが、レンジで温めるパックのご飯でもいいわけです。

一汁一菜でもの足りなければ、スーパーやコンビニの総菜を買って足せばいいと思います。

あるいはシャケなどの魚の切り身を買ってきて焼くと、さらに本格的な自炊になります。テフロン加工のフライパンで焼けばわりと簡単です。シャケの切り身が焼ければ、ハム・ソーセージや肉を焼くこともできます。

そして、具材たっぷりの味噌汁やスープがつくれるなら、市販のカレールーを使ってカレーをつくったり、具材を入れたインスタントラーメンをつくったり、寄せ鍋をつくったりもできるようになります。

***

「そんなのは料理といえるのか?」と思う人もいるかもしれません。

たしかに「料理」のうちに入らないともいえるでしょう。しかし、ベーシックだけどまさに「料理」だともいえるはずです。

そして、この程度の自炊で、暮らしをそれなりに支えることはできるのです。

さらに「このベーシックなレベルからもっと料理の腕を上げて、素材はいいものを使って……」などと考える必要もないことも、強調したいです。

もちろん、料理に興味を持ったのなら、さらにいろいろ覚えていけばいいでしょう。しかし、ここで述べた程度ものが一応つくれるなら、「もうそれ以上のことはしない」という考え方もあっていいはずです。私はだいたいそういう方針でやってきました。

このように「低い」志や理想で、自炊に取り組んでみてはいかがでしょうか? 

自炊経験のないオジさん・お兄さんたち(お姉さんもいるかもしれません)に、「志の低い自炊」の先輩として、そう私は言いたいのです。

でも「忙しくて・疲れてしまって、自炊などできない」という人は、無理はしなくていいかと。いつかできそうなときが来たら、やってみればいいと思います。

ここで述べたような自炊は、歳をとってから始めても、わりと簡単にマスターできるはずです。

 

関連記事