まず、前口上を。私は小学生2年のときに、学習マンガなどで「この地球上の生命は単純な微生物から30~40憶年かけて進化・枝分かれしたものだ」ということをはじめて知りました。そうだったんだ!
とくに学校の図書館にあった井尻正二作・伊東章夫絵『先祖をたずねて億万年』(少年少女新聞社、1970年発行)は熱心に読みました。もう50年も前か……
そして3年生になると、この本を含めた井尻・伊東コンビの進化論マンガのシリーズ(全部で4冊)を買ってもらい、愛読書としました(1冊は2年生のおわりに担任の若い先生が自分の蔵書をくださった)。
そのうち(先生から頂いた)『先祖をたずねて億万年』は、今も私の本棚にあります。
(『先祖をたずねて億万年』表紙と末尾のイラスト)
生物進化の歴史を少しでも知ると、とてつもなく大きな世界を感じることができます。人間や自分は巨大な世界のきわめて小さな一部にすぎない。
でも、その「巨大なもの」を認識できる人間や自分という存在も、やはりすばらしいのです。
私は理科や自然科学が得意とはいえません。高校の物理や化学は落ちこぼれました。それでも、生物進化の大きな物語に触れるのは大好きです。今もその分野の概説書や入門書を、たまに買って読むことがあります。
私は「世界史」をライフワークにしています。「生物進化の歴史」は、歴史の勉強の一部であるという気持ちもあります。
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それでは「本題」を。46億年前に地球が誕生してからの、生物進化の歴史におけるおもなトピックを、ごく簡単にみわたします。1000数百文字で要約した、3分で読める生物進化の歴史です。
なお、年代は大雑把に切りのいい数字で書きましたし、説によって多少ちがいがあります。でも入門的な目安にはなるはずです。
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地球の誕生は、46億年前。最古の生物――原始的な単細胞生物が生まれたのが、38億年前です。
そして21憶年前には、複雑な構造でさまざまな器官を持つ高度な単細胞生物=真核細胞生物が誕生しました。多細胞で複雑な体制を持つ高等生物(私たち人類はまさにそう)は、みな真核細胞生物です。
さらに10憶年前には、真核細胞生物のなかから、多くの細胞によって構成される多細胞生物が生まれます。ただしまだ単純で原始的な形態です。
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そこから進化して、複雑な体制を持つ多細胞生物が多くあらわれたのが、6~5億年前。これは「カンブリア爆発」といわれます。この時期に、現在のさまざまな高等動物の原型が生まれました。昆虫などの節足動物、タコ・イカなどの軟体動物、魚類、両生類、哺乳類などのせきつい動物等々……
もともと生物は海に限られていました。生物が陸上に生息し始めたのが、植物が5億年前で、昆虫などの動物が4億年前。
さらに魚類の一部から進化した両生類が、地上で繁栄したのが3億年前。両生類は、爬虫類や哺乳類の共通の祖先です。
両生類の一部から進化した恐竜などの爬虫類が繁栄したのが2億~1億年前。この時期、哺乳類もあらわれましたが、まだ小さくマイナーな存在です。
やや遅れて、爬虫類の一部から鳥類も生まれています。
また1億年前には、現在の植物の主流である被子植物(堅いタネの、目立つ花が咲く)が登場し、繁栄しはじめました。
恐竜は6500万年前に滅亡しました。巨大な隕石が地球に衝突し、環境が激変したためとされます。その後の地上の「空き」を埋めたのが、かろうじて生き残った哺乳類でした。
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6000万年前から、哺乳類は数や種類を増やしていきました。その中に霊長類という、樹上の生活に特化した哺乳類がいました。
霊長類は木の枝をつかむ手が発達し、立体的な視覚や、情報処理に長けた脳をもっています。700万年前にその一部が、樹上から地面に降り、二本足で歩き、手と脳をさかんに使うようになりました。これが広い意味での人類の誕生です。
そして20万年前には人類の一派として、現生人類(ホモ・サピエンス)があらわれました。ホモ・サピエンスはアフリカで生まれましたが、5~6万年前からアフリカを出る移動が活発化して、世界各地に拡散していきました。
また、もともと地球上にはホモ・サピエンス以外の人類(ネアンデルタール人やその他)も同居していたのですが、1万年余り前までにはすべて絶滅し、ホモ・サピエンスだけが残りました。
1万年余り前(1万2000年前頃)には一部の地域(西アジア)で初期の農耕集落が生まれます。
そして農耕社会が発展して、6000~5000年前に西アジア(中東)で、巨大建築・国家・文字などを備えた最初の都市文明が生まれました。私たちの現在の文明は、それを受け継いだものです。
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以上のトピックのまとめ
46憶年前 地球誕生
38億年前 生命誕生
21憶年前 真核細胞生物誕生
10憶年前 多細胞生物誕生
6~5億年前 複雑な体制の多様な生物(カンブリア爆発)
5~4億年前 生物の上陸(植物→動物)
3億年前 両生類の繁栄
2~1億年前 恐竜など爬虫類の繁栄
この頃、ほ乳類・鳥類も現れる
6500万年前 恐竜絶滅
6000万年前 哺乳類の繁栄始まる
700万年前 最初の人類の祖先現れる
20万年前 現生人類現れる
1万2000年前 農耕の開始
6000~5000年前 文明の始まり
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最後に、現生人類=ホモ・サピエンスの生物界での位置づけを。
生物の世界は最も大きくは3つの「ドメイン(超界)」に分類される。
「真核生物」という最も発達・高度化した細胞からなる生物のドメインのほか、比較的単純で低次な細胞の「細菌(バクテリア」「古細菌」というドメインがある。人類などの高等生物はみな真核生物のドメインに属している。
真核生物のドメインは、最も大きくは動物界・植物界・菌界……などの「界」に分類され、人類は動物界に属する。
動物界は、せきつい動物門(もん)・節足動物門(昆虫やクモなど)・軟体動物門(イカ・タコ・貝類など)……などの「門」というグループに分類され、人類は、せきつい動物門に属する。
せきつい動物門は、哺乳「綱(こう)」・爬虫綱……などからなる。その中で人類は哺乳綱(類)に属し、さらにその中の霊長目(もく)(サルの仲間)の中のヒト科というグループに属する。
さらにヒト科の中のホモ属というグループのサピエンス(知恵がある、の意)という種が今の人類。
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