そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ヒトラー・元ホームレスのヨーロッパ制覇

1910年代のウィーン(オーストリアの首都)に、アドルフ・ヒトラー(1889~1945)という1人の貧しいフリーターの青年がいました。4月30日(1945年)は、戦争に敗れたヒトラーが自殺した日です。 少年時代のヒトラーは、画家を目指していました。美術学校の入…

アニメは大人の教養になってきた・津堅信之『日本アニメ史』

このあいだ旅先の書店でみかけて、新刊の津堅信之『日本アニメ史』(中公新書、2022年)を買い、新幹線の中などで読みました。日本のアニメの歴史を、大正時代における始まりからつい最近まで述べた本。 まず興味をひかれたのが「中公新書という老舗の新書で…

古典はつまらないのが普通、だから古典のまわりをうろうろする

「古典」とされる哲学や思想の本は、つまらないことが多いです。それは、古典が「あたりまえ」のことを古臭い文体でくどくどと書いているものだからです。 古典のメッセージは、当時は最先端でも、今の私たちにとっては常識です。後世に大きな影響を与えたと…

県庁所在地と2番手の都市の格差拡大

先日、秋田県能代市を歩く機会がありました。能代は妻の郷里の近くで、県北部の中心都市です。 能代市は長いあいだ県内で県庁所在地・秋田市に次ぐ「2番手」の規模の都市でした。木材関連などの産業が栄え、能代港は、古くから県北部の木材・鉱物・コメなど…

今日の名言 ヘレン・ケラー 明日は視力がなくなるかもしれないという気持ちで

【今日の名言】ヘレン・ケラー(奇跡の人、1880~1968) 明日は視力がなくなるかもしれないという気持ちで、あなたがたの目を有効にお使いください。 視力と聴力を幼いときに失ったヘレン・ケラー。彼女が「もしも三日間だけ視力を与えられたら」というテー…

レーニン・20世紀の革命を発明した男

ロシア革命(十月革命、1917)を指導し、初の社会主義国家・ソビエト連邦(ソ連)を建国したレーニン(1870~1924)。4月22日はレーニンが生まれた日。 「レーニン」は、数多くあった彼のペンネームのうち最も有名なもの。本名はウラジーミル・ウリヤーノフ…

「どれにも一理ある」という見方の効用

日本の安全保障の法制・方針については、絶えず議論の対立があります。最近の国際情勢(ウクライナ・中国・北朝鮮などのこと)も、安全保障に関する関心を高めている。 「今の日本の周囲にはさまざまな脅威や不安定要素がある。防衛力の強化が急務だ。防衛予…

最初の文字記録には何が書かれていたか

世界最古の文字は、今から5300年ほど前にメソポタミア(今のイラク、シリア)のウルクという都市で生まれました。葦の茎を斜めに切ったペンで粘土板に刻んだ文字です。 5000数百年前というのは、文明の始まりの時代です。また、漢字の原型である甲骨文字の誕…

世界大戦の記憶

最近は「日本とアメリカって戦争したことがあるんですか?」という若い人もいるそうです。 戦争を体験した世代や、その世代の身近で話を聞いた人たちがいなくなろうとしています。教科書に戦争のことが書かれていても、読まない生徒は大勢います。最近はテレ…

「芋ヅル式読書」で自分の世界をつくる

読書をしていて「いい本だな」と思ったら、同じ著者の別の本をぜひ読んでみましょう。また、その著者がとくにおすすめしている本があれば、それもできれば読みましょう。 そして優先順位は落ちますが、さらに興味があれば、つぎの「関連する本」のうちのどれ…

今日の名言 ヘーゲル&エンゲルス 自由とは必然性の洞察

【今日の名言】 自由とは、必然性の洞察である。 これは哲学者ヘーゲル(1770~1831)の言葉として紹介されることもありますが、じつはヘーゲルの発想を共産主義の思想家エンゲルス(1820~1895)がまとめたものです。 「対象の性質や構造を知り、それに応じ…

ライト兄弟・大事なのは夢と野心と科学

1903年12月に原動機つきの飛行機による飛行を、史上初めて成功させたライト兄弟(アメリカ、兄ウィルバー1867~1912、弟オーヴィル1871~1948)。 このときの飛行時間は59秒間でしたが、のちの1908年9月には飛行時間は1時間半にまで伸びています。4月16日は…

勉強というのは、結局は独学しかない。

大人になってからの勉強は、結局のところ全部独学です。 大人になったら、手とり足とり教えてくれる人は、もういません。書物や専門家といった情報のありかへ、自分で問いかけ働きかけていくしか、方法はありません。 勉強に必要な条件は、あなたの意欲を別…

今日の名言 ヘーゲル 従僕の目に英雄なし

【今日の名言】ヘーゲル(ドイツ観念論の哲学者、1770~1831) 従僕の目に英雄なし。 この言葉は、哲学者ヘーゲルの『歴史哲学講義』(上・下、岩波文庫、長谷川宏訳)で知りました。ヘーゲルの創作ではなく、「そういう言葉がある」という形で紹介されてい…

レイチェル・カーソン・『沈黙の春』の著者は物静かな自然オタク

4月14日は『沈黙の春』の著者、レイチェル・カーソン(1907~1964、アメリカ)の亡くなった日です。彼女は科学者で、科学啓蒙書の著者として成功した人です。 彼女の代表作『沈黙の春』は、1962年に出版されました。農薬による環境破壊を警告した、今のエコ…

戦争を回避するために必要なこと・オルテガ・イ・ガセットの「平和主義について」

オルテガ・イ・ガセット(1883~1955)は、大衆社会批判の古典である『大衆の反逆』(1930年)を書いたスペインの思想家です。 彼はそのほかにもいろんなテーマを論じていて、そのひとつに「平和主義について」という、1937年に書かれた文章があります。 193…

リビングのソファと本棚

今週のお題「わたしの部屋」 古い団地を買ってリノベをして、夫婦2人で暮らしています。住み始めて16年になります。 写真は、リビングのソファと本棚です。机は妻が事務用に使うもの。下の写真は、ソファの向かいにある、となりの書斎コーナーとの仕切りにな…

騎馬遊牧民が史上初めて登場したのはいつ?

騎馬遊牧民とは「草原地帯に住んで馬を乗りこなし、遊牧(羊などの家畜を移動しながら育てること)によって暮らす人びと」の総称です。 彼らの根拠地はアジアからヨーロッパにかけての草原地帯。そこをおもな舞台に「トルコ系」「モンゴル系」など、世界史上…

今日の名言 ドラッカー 何によって人に知られたいか

【今日の名言】ピーター・ドラッカー(経営学者、1909~2005) あなたは何によって人に知られたいか。その問いへの答えは、歳とともに変わっていかないといけない。(『プロフェッショナルの条件』ダイヤモンド社より) この問いを自分に投げかけてみましょ…

ベランダの静かな宴会

古い団地をリノベして、16年ほど夫婦2人で住んでいます。近ごろだいぶ暖かくなってきたので、夕べは5時すぎからベランダで早めの夕食にしました。 ベランダは、リノベした際に大きなスノコのような板を置いてもらっています。そこに普段リビングで使っている…

命を縮めるほど精一杯だった・トキワ荘のマンガ家たち

画家や作家には、長寿の人の大勢います。でも、マンガの基礎をつくった巨匠には、長生きしなかった人が目立ちます。 亡くなった歳は、手塚治虫、60歳(1989年)。藤子・F・不二雄、62歳(96年)。石ノ森章太郎、60歳(98年)。赤塚不二夫、66歳で病に倒れ、…

『チ。‐地球の運動について‐』に描かれているのは地動説の史実でなく「本質」

この間、魚豊(うおと)『チ。‐地球の運動について‐』というマンガの1巻から7巻までを一気に読みました。前から気になっていた作品。 「チ」とは、地動説のことです。天動説を正統とする権力が支配する世界で、危険思想である地動説を探究し、権力による弾圧…

まず本屋さんへ行って、本を手に取ってみよう

「本を読みたいのですが、何か面白い本はありませんか?」と聞かれることがあります。でも、そういう質問は答えにくいのです。「こういうことを知りたいが、いい本はないか」というのなら、答えようがあるのですが。 ただばくぜんと「何かいい本はないか」と…

自然科学は避けて通れない

「イギリス経験論」の大哲学者ジョン・ロック(1632~1704)は、大学で医学や自然科学を学びました。 「ドイツ観念論」の巨匠、カント(1724~1804)やヘーゲル(1770~1831)の学位論文は、天文学にかんするものでした。カントは、太陽系の起源を論じる「星…

戦争を終わらせる難しさ・千々和泰明『戦争はいかに終結したか』

昨年(2021年)に出版された、千々和泰明『戦争はいかに終結したか』(中公新書)という本があります。世界大戦、ベトナム戦争、湾岸戦争などの1900年代以降のいくつかの大きな戦争の終結過程を述べた本です。 「戦争終結」というテーマは、たしかに重要です…

安く本が買える時代が終わる?

日経新聞(2022年4月2日朝刊)で知ったのですが、文庫本の新刊の平均価格は2021年に税抜きで732円となり、2001年の587円から約25%上がったのだそうです。税込みだと805円。 記事にもあるように、たしかに1000円を超える文庫本も最近は目につきます。 記事に…

新しく何かを始めるために大事なこと・じつは「過去の仕事の再検討」

新鮮な気持ちで新しく何かを始めたいという方に、ぜひおすすめしたいのが「過去の仕事の再検討」です。 まったく新しい何かに取り組むのもいいのですが、じつは「以前に取り組んで未完成や不発におわった仕事を再検討する」のは、自分を発展させるうえで大事…

ローコストですばらしいイス・天童木工 ペスカ

イスが好きです。あまり高くなく、でも美しく機能的なもの。財力が限られるので、ローコストで良いものに胸が躍ります。 松村勝男(1923~1991)デザインの天童木工のイスは、そんなローコストなイスの傑作です(天童木工 PESCA、写真)。 最も安い、座面が…

「真理を知りたい」という欲求

医師ウィリアム・ハーヴィー(1578~1657)は、「血液循環」の発見者です。4月1日はハーヴィーの誕生日。 「心臓の働きで血液が体内を循環していること」は、私たちには常識です。しかしハーヴィー以前には、明らかではありませんでした。 彼の研究は、長い…