そういちコラム

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今日の名言 ヘーゲル 従僕の目に英雄なし

【今日の名言】
ヘーゲル(ドイツ観念論の哲学者、1770~1831)

従僕の目に英雄なし。

この言葉は、哲学者ヘーゲルの『歴史哲学講義』(上・下、岩波文庫、長谷川宏訳)で知りました。ヘーゲルの創作ではなく、「そういう言葉がある」という形で紹介されています。

“それは英雄が英雄でないからでなく、従僕が従僕だからだ”(長谷川訳)と、ヘーゲルは言います。

どんなすごい英雄でも、そばについてお世話している召使い(従僕)の目から見ると、偉大な人物には見えてこない。「英雄」が、私生活ではだらしのない酒飲みだったり、好色だったり、といった様子を見ているからです。「英雄と言ったって、一皮むけばつまらない俗物だ」というわけです。

さらに、ヘーゲルは続けます。

“歴史的人物も、従僕根性の心理家の手にかかるとすくわれない。どんな人物も平均的な人物にされてしまい、ことこまかな人間通たる従僕と同列か、それ以下の道徳しかもたない人間になってしまう。”(『歴史哲学講義(上)』62ページ、長谷川訳)

私たちは、そんな「従僕」の目で書かれた話が好きです。「偉人たちも、じつはこんなにダメだった!」という本はよく出ています。

こういう本は、偉人の人間味が感じられるし、面白いところはあります。しかし、そういう「従僕の目」で偉人を語るところから入るのは、おすすめしません。

「従僕の目」しか持てない人は、偉業とか創造といったことを、正しく評価することができません。すごい仕事をした人に対しても、「でも、あの人は酒ばかり飲んでいるから」などと言って、その仕事を見ることはないのです。

「従僕の目」しか持てないと、「すごい」と思える何かに出会うことができなくなる。それでは寂しい人生ですし、成長もむずかしいでしょう。

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