読んだ本・観たもの
「はやぶさ2が小惑星から持ち帰った砂から、アミノ酸のいろんな種類がみつかった」ということについての“「生命の源」は宇宙から?”みたいな言い方の報道。これに対し、私はどうもひっかかります。 アミノ酸はタンパク質の材料で、生命(細胞)はおもにタン…
まず、前口上を。私は小学生2年のときに、学習マンガなどで「この地球上の生命は単純な微生物から30~40憶年かけて進化・枝分かれしたものだ」ということをはじめて知りました。そうだったんだ! とくに学校の図書館にあった井尻正二作・伊東章夫絵『先祖を…
よく言われることではありますが、現代社会(先進国)で顕著な変化のひとつに「コミュニティの衰退と個人主義化」があるでしょう。人びとが従来的なコミュニティのつながりを失って、ばらばらの個人になっていく――これは私たちの多くが感じているはずです。 …
漢字の書体で、私たちがまず習うのは楷書(かいしょ)という、字画を略したり続けたりせずきちんと書く書体です。 楷書 そして、やや崩れたやわらかい書体である行書(ぎょうしょ)や、さらに崩れた、流れるような書体の草書(そうしょ)もあります。 草書(…
歴史学者のウォルター・シャイデルによる、世界上のさまざまな「破壊がもたらした平等化」を扱った『暴力と不平等の人類史』(東洋経済新報社、2019年、原著2017年、鬼澤忍・塩原通緒訳)という本があります。 その本では、アジア太平洋戦争による「平等化」…
美術・音楽・文学などのさまざまな表現で、20世紀末以降「新しいものが生まれにくくなっている」ということは、専門家やマニアのあいだでたまに言われます。私もそのように思っている1人。 ただ、文化的な領域で「何が新しいか」は、感覚的・主観的なところ…
映画「シン・ウルトラマン」をみてきました。いろんな評価があるようですが、私は楽しい時間を過ごすことができました。50代後半の、初代ウルトラマンに夢中になった世代だからでしょう。 あの映画は、そういう世代のための「ウルトラマン祭り」です。「世界…
カフェで隣のビジネスマンたちが「1995~96年」を「バブルの頃」だと話すのを耳にしたことがあります。でも日本の「バブル経済」は1986年から91年(あるいは 90年)にかけてのこと。 また、かなり有名な、ある映画のDVDのパッケージでは、映画の舞台の「昭和…
時代区分とは、歴史的な時間の流れをいくつかに区切ることです。日本史では「奈良」「平安」「鎌倉」……といった「〇〇時代」の区分が最もおなじみです。 世界史の時代区分では、「古代・中世・近代」の「三区分法」というものがあります。 【古代】紀元前350…
5月12日は、フローレンス・ナイチンゲール(1820~1910 イギリス)の誕生日です。そしてこの日は、彼女の誕生日にちなみ「看護の日」とされているそうです(1990年制定)。 ではそもそも、ナイチンゲールは何をした人だったのでしょうか? 多くの人を救った…
この変わった建物は東京都中央区にある中銀(なかぎん)カプセルタワービル。建築家・黒川紀章(1934~2007)の設計で、1972年に建てられました。 そして、今年の4月に取り壊しが始まっていたことを、私は一昨日のNHKニュースで知りました。写真は2019年に撮…
このあいだ旅先の書店でみかけて、新刊の津堅信之『日本アニメ史』(中公新書、2022年)を買い、新幹線の中などで読みました。日本のアニメの歴史を、大正時代における始まりからつい最近まで述べた本。 まず興味をひかれたのが「中公新書という老舗の新書で…
世界最古の文字は、今から5300年ほど前にメソポタミア(今のイラク、シリア)のウルクという都市で生まれました。葦の茎を斜めに切ったペンで粘土板に刻んだ文字です。 5000数百年前というのは、文明の始まりの時代です。また、漢字の原型である甲骨文字の誕…
【今日の名言】 自由とは、必然性の洞察である。 これは哲学者ヘーゲル(1770~1831)の言葉として紹介されることもありますが、じつはヘーゲルの発想を共産主義の思想家エンゲルス(1820~1895)がまとめたものです。 「対象の性質や構造を知り、それに応じ…
【今日の名言】ヘーゲル(ドイツ観念論の哲学者、1770~1831) 従僕の目に英雄なし。 この言葉は、哲学者ヘーゲルの『歴史哲学講義』(上・下、岩波文庫、長谷川宏訳)で知りました。ヘーゲルの創作ではなく、「そういう言葉がある」という形で紹介されてい…
4月14日は『沈黙の春』の著者、レイチェル・カーソン(1907~1964、アメリカ)の亡くなった日です。彼女は科学者で、科学啓蒙書の著者として成功した人です。 彼女の代表作『沈黙の春』は、1962年に出版されました。農薬による環境破壊を警告した、今のエコ…
オルテガ・イ・ガセット(1883~1955)は、大衆社会批判の古典である『大衆の反逆』(1930年)を書いたスペインの思想家です。 彼はそのほかにもいろんなテーマを論じていて、そのひとつに「平和主義について」という、1937年に書かれた文章があります。 193…
この間、魚豊(うおと)『チ。‐地球の運動について‐』というマンガの1巻から7巻までを一気に読みました。前から気になっていた作品。 「チ」とは、地動説のことです。天動説を正統とする権力が支配する世界で、危険思想である地動説を探究し、権力による弾圧…
昨年(2021年)に出版された、千々和泰明『戦争はいかに終結したか』(中公新書)という本があります。世界大戦、ベトナム戦争、湾岸戦争などの1900年代以降のいくつかの大きな戦争の終結過程を述べた本です。 「戦争終結」というテーマは、たしかに重要です…
あなたは、台所で使う「計量カップ」や「計量スプーン」(大さじ・小さじ)を生み出したのが、日本人であることを知っていますか? それらは、医師で栄養学者の香川綾(かがわあや、1899~1997)が、1948年頃に考案したものです。3月28日は彼女の誕生日です…
作家・向田邦子さん(1929~1981)は、おいしいものが大好きでした。彼女のエッセイに食べ物のことはよく出てきます。お菓子や酒の肴や日常の食品について「どこの何がうまいか」に詳しかった。 そんな向田さんは、“「う」のひきだし”というものをつくってい…
少し前に濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書、2021年)を読みました。 この本によれば、雇用システムの2つのあり方として「細分化した業務(ジョブ)に専門の労働者を割り当てる」(ジョブ型)と「多くの職務を遂行する労働者で組織が成り立…
【今日の名言】トルストイ(ロシアの文豪、1817~1875) 光あるうち光の中を歩め。 これは新約聖書のイエスによる言葉で、それをトルストイが中編小説のタイトルにしています(原久一郎訳)。そして、終わりのほうで登場人物による語りのなかに出てきます。 …
【今日の名言】ゴース、ワインバーグ著『ライト、ついてますか 問題発見の人間学』より 私は(われわれは)その問題を本当に解きたいか? ゴースとワインバーグは技術的問題に詳しいコンサルタント。問題に対処するとき、この言葉で自問してみては? 私たち…
内閣府が2013年に行った「若者の意識」についての国際的な調査があります。日本および6か国の若者(13歳~29歳)を対象としたもの。 その質問項目に「自分の将来に明るい希望を持っているか?」というのがあります。選択肢は「希望がある」「どちらかといえ…
人類学者のデヴィッド・グレーバーが打ち出した「ブルシット・ジョブ(bullshit jobs)」という概念があります。訳せば「クソみたいな、どうでもいい仕事」ということ。グレーバーによれば、今のホワイトカラーの仕事の多くが「どうでもいい仕事」である。た…