そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

今日の名言 シャネル 学ぶことで単純になる

【今日の名言】
ココ・シャネル(ファッション・デザイナー、1883~1971)

わたしにとって1日ごとに、ものごとは単純になっていく。なぜなら、1日ごとに何かを学ぶから。

これは、かなりの上級者の言葉ではないかと思います。最初のうちは学ぶと物事のいろいろな面が見えて、世界は複雑になっていくのがふつうです。さらに深く学び続けると、シャネルのような境地になるのでしょう。

まったく別の世界の人ですが、セント=ジェルジ(1893~1986)というノーベル賞を受賞した生理学者も、似たことを言っています。

“科学は事柄を一般化しようとする傾向を持っていますが、一般的であることはいいかえれば単純化です。私のやっている科学、生物学は、私が学生であったころに比べてはるかに知識が増加していますが、同時により単純なものになっています”
(セント・ジェルジ著、小川豊訳『科学・論理・政治』岩波書店、1966年)

そして、「昔の生物学は複雑で多数の原理に分断されていたが、現代ではDNAに代表される原子論的なモデルによって統一的に説明されている」というのです。それは“すばらしい単純化”であると。

現代は知識や情報が爆発的に増えていて、人間の頭ではとても消化できない感じもします。学校教育も「教えることがあり過ぎてたいへん」とよくいわれます。

こうした教育の問題について、セント=ジェルジは「人間社会の成長とともに知識を単純化しつつ次世代へ相続するのでなければ望みはない」と言っています。そして、それは可能だと。

探究の過程では、知識が複雑化する局面もある。しかし、さらに深く究めれば、単純化はできる。人類はそれを行ってきた。

シャネルも「この科学者の言う通り!」と賛成するはずです。

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シャネルの言葉はこの本から。