そういちコラム

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「最小限住宅」で豊かに暮らす

「理想のマイホーム」といえば、以前は郊外の一戸建てが相場でした。でも近年は、都会の狭い敷地に小さな家を建てる人も増えているそうです。

床面積50~60㎡かそれ以下の家に、夫婦と子供で暮らす。狭くてもオーダーメイドで設計を工夫すれば、住み良い家になる。

そんな小さな家の古典に、昭和20年代に気鋭の建築家たちが提案した「最小限住宅」というものがあります。

当時の公的な住宅金融を受けるには「床面積15坪(約50㎡)以下」が条件でしたので、その枠内で豊かな暮らしを実現しようと、工夫や実験が重ねられました。その中で建築史に残る住宅の傑作も生まれています。

1戸が40~50㎡だった1970年頃までの公団住宅(団地)も、最小限住宅の一種といえるかもしれません。

その後、経済成長でモノも増え、もっと広い家が求められるようになり、最小限住宅は過去のものとなりました。

しかし「持たない暮らし」も注目される現在、制約の中で豊かな暮らしを追求する最小限住宅の発想も復活してきているようです。「小さな家」関連の本も、書店でみかけます。

たとえば「小さな家」をつきつめて、あえて30㎡ほどのワンルームマンションに少ない持ち物で暮らす中年夫婦の事例(柳本あかね『小さな家の暮らし』)。

さらに3坪前後のきわめて小さな家=「スモールハウス」というものもあるそうです(高村友也『スモールハウス』)。

こういうのをみると「わずかなスペースで十分暮らせるイメージ」がわいてきます。それで、なんだか自由な気持ちになるのです。

私たち夫婦はこの十数年、20坪(66㎡)の古い団地を改装して暮らしています。広い家ではありませんが、最近は「もっと小さな家でもいい」と思うこともあります。将来、さらに小さな「最小限」の家に住むかもしれません。

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「最小限住宅」の有名な事例。

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建築家・増沢洵の自邸(1952年)のイメージ。
5.5m×5.5mほどで建てられた。

 

小さな家の暮らし

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