【今日の名言】吉村順三(建築家、1908~1997)
雨の日に家にいると、家に守られているようで、好きだ。
(『吉村順三建築展・図録』より)
吉村はおもに昭和の戦後に活躍し、大規模な公共建築から低予算の小住宅まで、いずれもみごとな作品を残した建築家です。
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「家に守られている」――これは、建築の基本・原点である「家」というものの本質をとらえた言葉だと思います。それは建築の本質にかかわるといってもいい。そしてその「本質」を感じるのは、雨の日に家にいるときだと。
今日は台風の影響で、私の住む東京多摩地区にも、かなり激しい雨が降っています。テレビを消して静かに机に向かっていると、雨の音が響いてくる。
そういうとき、「自分は今、家に守られている」と感じます。そして、ある種の安らぎを感じるのです。
ただ、台風が直撃する地域では、「家が住む人を守りきれない」という事態もあり得えます。そういう状況の方には、のんきなことを言っているようで心苦しいのですが、私の住む地域では、今のところ「家に十分に守られる」状況です。
そして、こんな雨の日にも仕事や用事で外へ出ないといけない人はいる。私の妻も、今日は仕事で出ています。
ほんとうに「お疲れさま」と思いますが、仕事などを終えて戻れば、その人たちも家に守られる。
どしゃぶりの雨や雪などの悪天候のとき、やっと家にたどりついたときのほっとした感じは、誰にもあることだと思います。
とくに、子どものときのそういう経験を、今も思い出します。雨や雪で濡れた靴下を脱いで、足をふいて、雪の日だとストーブのそばで足を温めたり……母があたたかい飲み物を出してくれることもあった……
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どんな家でもいい。悪天候の日には、家の中で「守られているなー」と感じてみてはどうでしょうか。
そのときはテレビや音楽、パソコンなどを消すといいです。そして吉村順三の言葉を思い出してみる。
どこか安らぐ、あたたかい気持ち、あるいはじんわりとした気持ちになるのではないかと。
2005年の「吉村順三建築展」のチラシ。写真は、代表作のひとつである自邸の軽井沢山荘。
軽井沢山荘について一般向けに紹介した、吉村の著書