【今日の名言】
ウォルター・B・キャノン(1871~1945、アメリカの生理学者)
『からだの知恵』(講談社学術文庫、舘隣・館澄江訳、原著1932年)より
生物は、変化し得るがゆえに安定なのである。なにがしかの不安定性は、個体の真の安定のための必要条件である。
これは、フランスの生理学者リシェの言葉をキャノンが自著で引用したものです。
暑くなると汗をかいて体を冷ます、小さな傷が自然に治る等の「生体の恒常性維持(ホメオステーシス)」についてキャノンは研究しました。
人間などの哺乳類は、気温が氷点下でも酷暑でも、体温は(少なくとも一定時間は)ほとんど変わりません。高等生物ほど、外界の変化や刺激に反応して体内を調節し、修復する機能を体内に豊富に持っていると、キャノンはいいます。
私たちも、生活や仕事で安定した・気持ちのよい状態を保つには、一定の変化を続けないといけないのでしょう。周囲や社会が変化するからです。
そして、私もそうですが、多くの人は同じことを続けているようでも、やはり変化しているものです。そんな変化や調節を意識的に重ねていきたいものです。
キャノンは、生物のからだの論理をもとに、社会の安定や、社会に生きる個人の安定についても論じています。そして、社会は内外のさまざまな悪条件に対応する高度の調節機能を発達させるべきだと主張しているのです。
また、その調節機能によって個人が安定することは「さらに高度の自由、心の落ち着きと余暇を生み出す」とも述べています。
変化に支えられた安定は、人をさらに自由にするのでしょう。「安定」は重要なテーマなのです。
キャノンの本。90年も前の本ですが、新鮮な感動があります。