そういちコラム

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オイルランプの明かり

以前にテレビでみたのですが、停電の際に、シーチキンの缶を明かりにする方法があるそうです。缶の中身にティッシュをよってつくった灯芯をさしこみ、火をつける。灯芯はシーチキンの油を燃料にして1時間ほど燃え続けるとのこと。

また、陶器や金属の器に食用油を入れ、ティッシュの灯芯に火をともすというやり方もあります。シーチキンの缶は試したことはありませんが、こちらは私もやってみたことがあります(火の扱いにやや注意が必要だと感じました)。

このように「油の入った器に灯芯をさして火をともす」簡素なあかりを、オイルランプといいます。

オイルランプは、5000年前頃のメソポタミア文明で発明されました。

なお、ろうそくは「燃料を固形化したオイルランプ」です。ろうそくが発明された時期ははっきりしませんが、オイルランプからやや遅れてメソポタミアやエジプトで生まれたとみられています。

初期のオイルランプは、油の入った陶器の皿に灯心をさしただけの簡単なものです。しかし、燃やしても煙が少ない、精製された油(ゴマ油やオリーブ油など)を使っているのが画期的でした。そのような油を量産することは、数千年前には高度な技術だったのです。

オイルランプ以前の明かりであるたいまつは、多くの煙や熱が出て、室内の使用には向きません。暖炉は明かりの役目も果たしましたが、照明専用ではなく、やはり煙が出るので換気の手間がかかります。

オイルランプは、はじめての実用的な室内の照明器具なのです。

それでも当初は油の生産に限界があり、オイルランプは貴重なぜいたく品でした。

しかし、2500年前頃から古代ギリシア人はオリーブ油を製造する技術を大きく発達させて、以前よりもはるかに多くオイルランプを用いるようになりました。

古代ギリシアは「夜の明かりが一般的になった最初の社会」です。夜も読み書きができたことは、学問・文化の発達を後押ししたはずです。

古代ギリシアのオイルランプ

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オイルランプは中国などの東アジアをふくむ、世界各地に広まりました。日本のあんどんもオイルランプの一種です。

1800年代の欧米では石油を用いた、ガラスのホヤ(火を覆うカバー)や精密な燃焼装置を備えた高度のオイルランプもつくられました。

先進国で電灯が普及したのは1900年代以降です。つまり人間は、文明国では有史以来のほとんどの期間を、オイルランプで過ごしてきたのです。

たまにですが、私は夜に電気を消して、小さなアルミカップに入ったキャンドルを使うことがあります。実用ではなく、鑑賞用です。2011年の東日本大震災のときの「計画停電」で、それをやってみたのがはじまりでした。

キャンドルの明かりをながめていると、少しほっとします。その感覚は現代の私たちも紀元前の人びとも、変わっていないはず。これは文明の基本の明かりなのです。

 

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