3月8日は漫画家・水木しげる(1922~2015)の誕生日。そして今年(2022年)は生誕100年。
水木さんの言葉に、“少年よ、がんばるなかれ”というのがあります。“ときどき怠けることは、生きていくうえで大切なことです”とも言っている。(水木しげる『がんばるなかれ』やのまんブックス)
これは重たい荷を背負って苦しむ人には、ほっとする言葉です。
でも、彼はこうも言っています。“若いときはなまけてはダメです!”(『水木サンの幸福論』角川文庫、以下同じ)
水木さんは、漫画の道では本当にがんばった人です。たとえばこう述べています。
“水木サン(注:自分のこと)は売れなかった時代でも、原稿料の大半は、漫画の筋を考えるのに役立ちそうな本とか……を買い込むのに使っていました。食べものを買う金も満足に残らなかった……ところが、同業者の家に行くと、本なんか一冊もない人たちも少なくありませんでした。……そういう人たちは、ほとんどが消えてしまいました”
でも、水木さんは一方で“努力は人を裏切る”とも言います。“努力に見合うマネーはなかなか得られない”と。
水木さんは40歳過ぎまでは売れず、貧乏に苦しみました。それでも“絶望したり、悲観したり、愚痴をこぼしてはいけない”のだそうです。
“ただただ、努力するのです。……栄光や評価など求めず、大好きなことに熱中する。それ自体が喜びであり、幸せなんです”
苦労人の、じつにきびしい人生観。でも息苦しくはない。やはり本当に好きなことを存分に追及して、すぐれた仕事をした人の言葉だからでしょう。
「がんばるなかれ」という言葉は、たいていの人には「まだ早い」のかもしれません。でも、水木さんによれば“中年をすぎたら、愉快になまけるクセをつけるべき”なのだそうです。
私も中年になって、まだ早いかもしれませんが怠けるクセがついてきました。「がんばるなかれ」と言われなくても大丈夫。
しかし、それでも好きなことに熱中しているときもある。そのときはまあまあ勤勉です。怠けたりがんばったりしながらやっています。
水木さんの漫画の1コマをもとに
(若い頃の顔にして)描いた