5000~4000年前のメソポタミア(今のイラクなど)には最古の文明が栄えていました。大河の水を利用する大規模な灌漑(かんがい)農業によって人口数万規模の都市がいくつも成立していたのです。
しかしこの地域では、灌漑農業を長く続けた結果「塩害」が深刻化しました。
メソポタミアは雨が少なく日照の強い乾燥地で、河から引いた水が蒸発する際に塩分が地表に蓄積する傾向があり、それが長年積み重なって作物の収穫が減る「塩害」が起こるのです。
考古学者・前川和也さんの研究によると、メソポタミアの都市ラガシュでは4300年前頃から300年弱の間に耕地面積あたりのムギ類の収穫が4割減っています。これは塩害の影響とみられます。
そして、作物の主流は塩害に弱いコムギから比較的強いオオムギにかわりました。
大規模な灌漑によって乾燥地帯を広大な耕地に変えることで、メソポタミアの都市文明は成立しました。しかし、文明の活動で思わぬ方向に環境が変化し、従来のやり方が困難になってしまったということです。
そんな現代の地球温暖化のような環境問題が、文明の始まりの頃からあったのです。
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参考文献