そういちコラム

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国が衰退するときの「大企業病」

どれほど繁栄した国も、いつかは衰えます。衰退期の国では、過去の成功体験にこだわって新しいものを受けつけなくなる「社会の硬直化」がみられます。

これは、成功した大企業が時代の変化に取り残され衰退するという、「大企業病」に似ています。

2012年に破たんしたコダック社は、その典型です。コダックは、写真フィルムの分野で世界最大の企業でした。1970年代にデジタルカメラを開発するなど、高い技術力もありました。

しかし、90年代のリストラで伝統的なフィルム関係の事業を残し、のちに開花するデジカメなどの新しい技術や事業を売り払ってしまったのです。

1800年代、衰退期の清(中国)やオスマン帝国(トルコ)も、そんな大企業病に陥っていました。ヨーロッパの技術を導入する改革も行われましたが、十分な成果はあがりませんでした。

例えば1870~1880年代の清では、有望な若者を政府が欧米に留学させましたが、若者たちは祖国に帰っても重要な仕事に就けませんでした。

1800年代半ばのオスマン帝国では、イギリスなどから各分野の専門家を招きました。しかし何人ものイギリス人が、自分たちの指導が無視され改革が進まないことに失望し、帝国を去っていきました。

当時の中国やオスマン帝国にはかなりの財力や組織がありましたが、抵抗勢力の力が強く、新しいことを吸収する意欲も弱かったのです。これらの帝国は、1900年代前半に滅亡しました。

国の繁栄が続くと、どこかで大企業病にとりつかれて、衰退に陥ってしまう。そうしたことが、世界史ではくり返されてきたのです。今の日本も「大企業病」におかされてきたのではないかと心配になります。

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この記事は、つぎの私そういちの著作の一部をもとにしています。

一気にわかる世界史