NHKの朝ドラで、新婚のヒロイン夫婦が、移り住んだばかりの町で回転焼き(今川焼き)の店を始める話がありました。
時代は昭和30年代。2人はどうにか3か月暮らせるくらいの貯金はあるものの、ほかにはとくに何も持たず、仕事もない。ヒロインには、幼少時に母親が1人でおはぎをつくって売っていた思い出がある。少ない元手で自分にもできる商売として、回転焼きを思いついた。
これをみて私は、10年余り前に沿線の商店街にあった(今はない)、おいしい今川焼き屋さん思い出しました。
ビルの間の、幅2mもないスペースにある、屋台みたいな小さな店。でも大繁盛でした。たしかにああいう店なら、少ない元手でもできそう。
しかし、あれだけのおいしいアンコは、なかなかつくれないと思います。しかも、利益の出る原価でつくらないといけない。
ネットをみると「今川焼き屋はたいへんだからやめときなさい」という記事もちらほらあります。どんな商売もたいへんなことはあるのでしょう。
それでも、あのおいしい今川焼屋さんは、商売におけるある種の理想をあらわしていると思います。
少ないコストで営むことができ、大勢のお客さんが喜び、それなりに食べていける。そしてあのアンコという、簡単には真似できない優位がある。
「今川焼き屋をやろう」というのではなく、ああいう「たしかな優位を持った小商い」が魅力的ということです。
でも、あの今川焼き屋さんはもうありません。他所へ移転したのでもないようです。店じまいしたのはどういう事情だったのか気になりますが、わかりません。