そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

「一挙解決願望」に気をつけよう

私たちは、ときどき「問題を一挙に解決したい」という思いにとらわれます。「これを何とかすれば」というポイントさえ片付ければ、すべてがすっきりする、と思い込む。いわば「一挙解決願望」です。

例えば「会社を辞めればすっきりする」「この人と別れれば自由になれる」といった想い。でもたいていは、会社を辞めても、配偶者と別れても一挙解決とはいかないのです。

むしろ、辞めたり別れたりしたことで、経済的問題などの、新たな苦しみを抱えることになったりする。

辞めたり別れたりする前に、すべきことはないでしょうか? 会社で不満があるなら、プライベートを充実する、会社での人間関係を少しでも修復するなど、劇的ではないけど現実的な対処を重ねるのです。

2016年6月、イギリスは「EU離脱」を国民投票によって決め、2020年1月末には正式に離脱しました。移民さえいなければ、EUのさまざまな縛りさえなければ、いろんなことがよくなるはずだ。離脱してすっきりしよう……。イギリス国民のあいだでは、一挙解決願望が大きな力を持ったのです。

2016年11月のアメリカ大統領選挙の結果、つまりトランプ大統領の誕生も、米国民の一挙解決願望がもたらしたといえるでしょう。

でも、問題や不満は簡単には解決しないことは、近年の歴史が示すとおりです。

さらに極端に「一挙解決」を求める方向に行かないかという心配もあります。

第一次世界大戦や第二次世界大戦は、そのような願望が暴発した、最大の事例です。このときは国民や指導者が、深刻な失業や、国際関係での緊張のような、さまざまな問題を戦争によって、世界をリセットするような感じで一挙解決しようとしたのでした。

「一挙解決願望に気をつける」ということは、忘れないほうがいいです。個人の小さなことでも、世界情勢についても。

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